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性フェロモン成分追加によるリンゴコカクモンハマキ交信攪乱効果の増強


[要約]

 リンゴコカクモンハマキに対する交信攪乱効果は、従来の交信攪乱剤で使用されているZ11-14:Acに加えて、本種性フェロモンの主成分(Z9-14:Ac)を同時に放出することにより飛躍的に高まった。

[キーワード]

リンゴコカクモンハマキ、交信攪乱効果、性フェロモン

[担当]福島果樹試・病理昆虫部・虫害研究室
[連絡先]024-542-4191
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術・普及


[背景・ねらい]

 ハマキムシ類に対する交信攪乱成分は、茶園や落葉果樹を加害する主要種共通の性フェロモン(Z)-11-tetradecenyl acetate(Z11-14:Ac)が単独で用いられてきた。リンゴ用複合交信攪乱剤のリンゴコカクモンハマキに対する交信撹乱効果は不十分であり、本種に対する殺虫剤の削減も慎重に行う必要があった。リンゴコカクモンハマキでは、(Z)-9-tetradecenyl acetate(Z9-14:Ac)が性フェロモンの主成分であることから、Z11-14:AcとZ9-14:Acを同時に放出することにより、効果の安定化を図る。

[成果の内容・特徴]

1.

リンゴ用複合交信攪乱剤(2,000本/ha、目通りの高さ)を処理したリンゴ園にZ9-14:Ac単独製剤をそれぞれ600本/ha、300本/haおよび80本/ha上乗せ処理することにより、リンゴコカクモンハマキに対する誘引阻害効果はリンゴ用複合交信攪乱剤のみの場合に比べて飛躍的に改善された(表1)。

2.

従来のZ11-14:Ac製剤にZ9-14:Acを約25%同一チューブに充填した試作製剤を用いて、放飼したリンゴコカクモンハマキ雄成虫に対する誘引阻害効果を検討した。図1に示すとおりZ11-14:Acを単独で用いる従来の製剤よりもZ9-14:Acを同時に放出した方が安定した効果が認められた。

[成果の活用面・留意点]

1.

性フェロモン成分が追加されれば、ハマキムシ類に対する補完防除を確実に削減することが可能と考えられる。

2.

新製剤(目通りの高さの処理)においても、高い位置の性フェロモントラップに誘殺されていることから、従来の製剤同様、摘果作業時にディスペンサーを樹上部に付け替えることが有効と考えられる。

3.

ハマキムシ類の補強のため、新たに加えられた交信攪乱成分の有効期間について、検討が必要である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:

性フェロモン成分追加によるリンゴコカクモンハマキ交信攪乱効果の増強

予算区分:

国庫

研究期間:

1996〜2000年

研究担当者:

岡崎一博、荒川昭弘、安部 充、佐藤力郎、阿部憲義

発表論文等: 1)岡崎一博ら(2000a)北日本病虫研報 51:248-250.
2)岡崎一博ら(2000b)北日本病虫研報 51:251-253.
3)岡崎一博ら(2001)応動昆 45:137-141.

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