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畑わさびの新害虫ミドリサルゾウムシの生態


[要約]

 ミドリサルゾウムシCeuthorrhychus diffusus Hustacheは、成虫が畑わさびの葉を食害し、花茎や葉柄の内部に産卵する。幼虫は5月中旬には見られ、6月上旬には老齢幼虫が葉柄を脱出して土中に潜る。

[キーワード]

ミドリサルゾウムシ、Ceuthorrhychus diffusus、畑わさび

[担当]岩手農研セ・病害虫部・病理昆虫研究室
[連絡先]0197-68-4424
[区分]東北農業・生産環境(病害虫)
[分類]技術・参考


[背景・ねらい]

 平成11年、岩手県岩泉町において畑わさびを加害するサルゾウムシの一種が発生した。九州大学の吉武啓氏により、本種はミドリサルゾウムシCeuthorrhychus diffusus Hustacheと同定され、畑わさびの害虫として初めて確認された。本種に関する生態と防除対策について、いくつか知見が得られたので紹介する。

[成果の内容・特徴]

1.

ミドリサルゾウムシの生態と被害
(1)

年1化で成虫で越冬する。成虫は4月中旬から活動を始め、畑わさびの主に葉身に小さい丸い穴をあけて食害する。雌成虫は、花茎や葉柄に口吻で穿孔し、その中に1卵ずつ産卵する。孵化した幼虫は、花茎や葉柄の内部を食害する。幼虫の食入痕は異変し、被害が大きいと株全体の生育が抑制される(図1)。

(2)

産卵盛期は5月上旬〜中旬で、幼虫は5月中旬から出現する。老齢幼虫は、6月上旬から葉柄に穴をあけて脱出を始める(図2)。

(3)

畑わさびの花茎は、新葉が生長する前の4月上中旬から抽出する。葉柄と比較すると、産卵数、幼虫数ともに花茎の方が多い(図3)。

2.

防除方法
(1)

薬剤防除の場合、成虫の産卵初期にあたる4月下旬〜5月上旬に、ワサビクダアザミウマ防除剤であるジメトエート粒剤6kg/10aの散布が効果が高い(図4)。

(2)

アブラナ科植物を食餌とするので、畑わさびの連作を避けるとともに、周辺のアブラナ科雑草や畑わさびの収穫残さなど、発生源の除去を心がける。

(3)

特に林床で育苗する場合、定植苗からの本畑への持ち込みがないよう十分注意する。

[成果の活用面・留意点]

1.

活用面
 本種の発生生態が明らかになり、畑わさびにおける耕種的防除や薬剤散布による防除の指導に活用できる。

2.

留意点
(1)

畑わさびで同様の食害痕を残すものに、ナトビハムシと思われる幼虫も確認されたが、現地ではその被害程度は少ない。

(2)

薬剤防除後の花茎は食用に供しない。また、林床栽培で薬剤を使用する際は、沢水など水系への流入がないよう注意する。

[具体的データ]

 

 

[その他]
研究課題名:

新農薬の効果検定と防除基準作成

予算区分:

民間委託

研究期間:

2000〜2001年

研究担当者:

後藤純子、千葉武勝(元病害虫防除所長)

発表論文等:

千葉武勝ら(2001):畑わさびの新害虫ミドリサルゾウムシ 北日本病虫研報52:260


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