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酒造好適米新品種候補系統「青系酒140号」の育成


[要約]

 水稲「青系酒140号」は中生の大吟醸酒向け酒造好適系統である。本系統は、心白が小さく、点状・線状心白の発現が多く、高精白が可能である。また、醸造特性及び酒質も良好で、大吟醸酒用原料米として有望である。青森県で奨励品種に採用する予定である。

[キーワード]

水稲、青系酒140号、高精白、大吟醸酒用原料米、奨励品種

[担当]青森農試・育種部
[連絡先]0172-52-4312
[区分]東北農業・水稲
[分類]技術・普及


[背景・ねらい]

 青森県の酒造好適品種「華吹雪」は主に純米酒用の原料米として使用されており、吟醸酒用原料米は他県から移入している。この一部を補完するものとして、本県の酒造関係者から「山田錦」に匹敵するような県独自の吟醸酒用品種が要望されており、育成を進めてきた。

[成果の内容・特徴]

1.

「青系酒140号」は、「山田錦」並に良質な酒造好適品種の育成を目標に、1987年に青森県農業試験場において、「山田錦」を母、「華吹雪」を父として人工交配された後代から育成された系統である(表1)。

2.

出穂期は「華吹雪」に比ベ1〜2日遅く、成熟期は「華吹雪」並の中生の粳種である(表1)。

3.

稈長・穂長は「華吹雪」並からやや長く、穂数が「華吹雪」より多い短稈・偏穂重型である。収量性は「華吹雪」よりやや劣る。稈はやや太く、倒伏抵抗性は「華吹雪」より弱いやや強である(表1)。「華吹雪」と同様に、芒は無く、ふ先色は黄白、粒着密度はやや密、脱粒性は難である。

4.

いもち病真性抵抗性遺伝子型はPiaと推定され、いもち病ほ場抵抗性は葉いもち・穂いもちともに弱である。障害型耐冷性、穂発芽性は中である(表1)。

5.

玄米は大粒であるが、千粒重は「華吹雪」より軽い(表1)。心白は「華吹雪」より小さく少ないが、点状及び線状の心白の発現が多く(表2)、高精白が可能である(表3)。

6.

醸造特性は良好である。製成酒は、「山田錦」・「豊盃」と比べ、一般成分については若干日本酒度が高く、遊離有機酸について差はない。香気成分は若干高めである。総合的にはすっきりタイプで香味の調和がとれた酒質である(表3)。

[成果の活用面・留意点]

1.

青森県で奨励品種に採用する予定で、普及見込み地帯は気象条件が最も安定した津軽中央地帯の平坦地域である。普及見込み面積は約20haである。

2.

倒伏抵抗性・いもち病抵抗性が弱く、障害型耐冷性も不十分なので、品質の低下、タンパク質含量の増加、いもち病の予防や冷害時の影響を最小限に抑えるため多肥栽培は避ける。

3.

いもち病抵抗性は葉いもち・穂いもちともに弱いので、葉いもちの予防と、穂いもちの出穂直前及び穂揃い期の3回防除を基本とする。

4.

障害型耐冷性は強くないので、「幼穂形成期深水かんがい」で低温抵抗性を強化し、穂孕期の低温時には深水管理をして幼穂を保護する。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:

第II期水稲良食味品種早期開発事業

予算区分:

県単

研究期間:

1987〜1989、1994〜2001年

研究担当者:

三上泰正、横山裕正、高舘正男、小林渡、舘山元春、前田一春、川村陽一、立田久善、中堀登示光、工藤哲夫、浪岡實


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