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耐冷・耐病・糯質良・水稲新品種候補系統「東北糯167号」の育成


[要約]

 水稲「東北糯167号」は寒冷地中部では早生の晩に属し、耐冷性が強、いもち病抵抗性・耐倒伏性がやや強で、良質な糯米系統である。玄米白度が高く、つき餅の食味も優れる。長野県で採用され、高品質糯米の安定生産が期待される。

[キーワード]

水稲、東北糯167号、早生の晩、耐冷性、いもち病抵抗性、耐倒伏性、糯米

[担当]宮城古川農試・作物育種部
[連絡先]0229-26-5105
[区分]東北農業・水稲
[分類]技術・普及


[背景・ねらい]

 東北地域を中心に広く普及している「ヒメノモチ」は、玄米の外観品質は良いものの、冷害や倒伏に弱く、穂発芽や胴割れによる品質低下も著しく、高品質米の安定生産が困難であった。そこで、「ヒメノモチ」に替わる、耐穂発芽性・耐冷性・耐倒伏性に優れ、良質・良食味で加工適性の高い早生糯品種の開発を目指した。

[成果の内容・特徴]

1.

水稲「東北糯167号」は1992年に宮城県古川農業試験場において、早生の良質安定多収な糯米品種の育成を目標に、良質糯品種の「ヒデコモチ」を母とし、早生耐冷糯品種の「アネコモチ」を父として交配し、その後代より育成した系統である(表1)。

2.

出穂・成熟期は「ヒメノモチ」よりやや早く、育成地では“早生の晩”である(表1)。

3.

「ヒメノモチ」に比較して、稈長はやや長く、穂数はやや少なく、草型は“偏穂重型”である。耐倒伏性は「ヒメノモチ」より強く、収量性は同程度である(表1)。

4.

いもち病真性抵抗性遺伝子型は“PiaPiiPik型’’と推定され、圃場抵抗性は葉いもち・穂いもちともに“やや強”で、障害型耐冷性は“強”、穂発芽性は“中”である(表1)。

5.

玄米の外観は白度が「ヒメノモチ」並に高く光沢も良好である。つき餅の食味は粘りが強く、こしと弾力があり、味・香りとも良好で「ヒメノモチ」に優る(表1)。

6.

餅の硬化性は「ヒメノモチ」と同程度で、煮溶けはやや遅く加工適性は高いと考えられる(表3)。

[成果の活用面・留意点]

1.

長野県で奨励品種に採用され、標高700m〜900m(中信北部、北信、東信の霧下は600m〜800m)地帯の「ヒメノモチ」と「カグヤモチ」・「もちひかり」の一部に替えて普及が見込まれる。普及見込み面積は500haである。

2.

穂発芽性が“中”なので刈り遅れに注意し、適期収穫に努める。

3.

耐倒伏性は強いが、稈長が長いので極端な多肥栽培は避ける。

4.

白葉枯病抵抗性は“弱”なので、常発地では栽培を避ける。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:

寒冷地向け極良食味・耐冷性・いもち病抵抗性品種の育成

予算区分:

指定試験

研究期間:

2001年度(1992〜2001年)

研究担当者:

永野邦明、松永和久、滝沢浩幸、早坂浩志、薄木茂樹、黒田倫子、千葉文弥、宮野法近、佐々木都彦、遠藤貴司


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