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[背景・ねらい] |
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東北地方の広大な草地資源を有効に利用し良質の赤身牛肉を生産するために、放牧を取り入れた日本短角種の粗飼料多給型肥育法の検討を行っている。その中で、と畜月齢が25ヶ月以上で肥育期間が十分であるにも関わらず肉の締まりが悪いために、枝肉の肉質等級が低い1等級に格付けされる場合が見られた。等級の格落ちによって枝肉の取引価格が低下するばかりではなく、日本短角種牛肉の評価全体に悪影響があることから、放牧を取り入れた粗飼料多給型の肥育法に関しては、肉質の改善、特に肉の締まりの問題を解決する必要があった。 |
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[成果の内容・特徴] |
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1. |
日本短角種秋子去勢牛の2シーズン放牧を取り入れた粗飼料多給型の肥育を行った結果、25頭中8頭の枝肉が肉の締まりが悪いために1等級に格付けされた。 |
2. |
放牧育成中の日増体量(DG)と肥育期間中の日増体量を比較したところ、放牧中の増体量が高く肥育中の増体量が比較的低い群と、放牧中の増体量が低く肥育中の増体量が比較的高い群に分かれ、放牧中の増体量の高い群には1等級のものは見られなかった(図1)。 |
3. |
放牧育成中の増体量を調べたところ、放牧開始後60日前後までは1等級、2等級の牛の増体量には差がなかったが、それ以降放牧期間を通しての日増体量が0.6kg/日以下のものに1等級のものが多く見られた(図2)。 |
4. |
1等級と2等級の牛の肥育成績と枝肉性状を比較したところ、放牧期間中の日増体量、ロース芯面積、歩留基準値が2等級のもので有意に高かった(表1)。これらのことから、放牧育成中、特に放牧開始2ヶ月目以降の増体が枝肉の肉質に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。 |
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[成果の活用面・留意点] |
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1. |
放牧を取り入れた日本短角種の肥育では、放牧開始後2ヶ月目以降の増体が重要であることから、その時期の増体の管理を慎重に行うことが重要である。特に、放牧中の増体を著しく低下させるピロプラズマ病の予防や、放牧地の草量が不足する場合には転牧や飼料の給与を行う等の対策を施す必要がある。また、増体の見込みのない牛は早めに下牧させて舎飼いに移す等の措置を講ずる。 |
2. |
この結果は、日本短角種秋子去勢牛の2シーズン目の放牧育成に関する結果で、春子の2シーズン目の放牧や去勢以外の育成牛では異なる可能性がある。 |
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