研究所トップ研究成果情報平成13年度

テンプレートマッチングを使用した水稲株位置推定アルゴリズム


[要約]
複数の株モデルで構成され、条間・株間情報を含んだテンプレートを作成し、圃場画像とのテンプレートマッチングを行うシンプルな方法で、車両の影や太陽光の反射などのノイズの影響を抑えながら、移植水稲の株位置を安定して推定することが出来る。
[キーワード]
  農業機械、移植水稲、株位置、画像処理、テンプレートマッチング
[担当]東北農研・総合研究部・農業機械研究室
[連絡先]019-643-3535
[区分]東北農業・作業技術
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
画像の農業機械分野への応用は、過去から多くの試みがされているが、植物工場のように環境を整備できる屋内を除き、屋外圃場では光環境を制御することが難しく、アルゴリズムが複雑となると同時に膨大な計算が必要であり、市販機械に組み込まれる技術を作り上げることは難しかった。ところが近年、数値演算機器の能力が飛躍的に増大すると同時に価格も低下し、農業機械分野へ応用する環境が整いつつある。
本研究は、移植水稲の株位置を推定するアルゴリズムに関するもので、条間・株間情報を含んだテンプレートを作成し、相互相関係数によるテンプレートマッチングを行うことで、シンプルかつ、光環境の変化にロバストなアルゴリズムの構築を目的とする。
[成果の内容・特徴]
 
1. 圃場上方から下向きに撮影すると、水稲が格子状に並んだ画像を得ることができ、近赤外域に感度を持たせたモノクロ画像では、植物体は明るい領域として、背景である土壌は暗い領域として表現される(図1)。
2. 稲株をガウス関数としてモデリングし、9つの株モデルを使用して条間・株間情報を含んだテンプレートを作成し、(図2)圃場画像とテンプレート間で相互相関係数を評価基準としたテンプレートマッチングを行う。テンプレートが作物間隔を考慮した特殊な周波数フィルタの働きをするため、規則正しく並んだ水稲成分だけを効率的に取り出すことが出来る。
3. 算出した相互相関画像(図3)には、テンプレートとの相関の高低を示す輝度の山が多数出現する。それぞれのピークに水稲株が存在するとして株位置を推定することができる(図4)。
4. 以上に示したような、シンプルなアルゴリズムであるが、完成度が高く、水面における太陽光反射(高周波成分が多い)や車両の影(低周波成分が多い)、雑草(ランダムに生える)などのノイズに対してロバストで、圃場で安定して動作する。
5. 移植2・4・6週間後の圃場画像(160×120画素)を使用し、100株の位置推定を行った結果、その95%を3cm以内の誤差で推定することが出来た。処理時間は0.4sec/画像であった。(※Pentium3・866MHz×2,MMX・SSE命令未使用の自作プログラムによる。)
[成果の活用面・留意点]
 
1. 機械除草・生育量モニタリング・画像ベースの自律走行など新しい技術への応用が可能。
2. 移植水稲に限らず作物の配置に規則性があれば、本アルゴリズムを適用できる。
3. 本アルゴリズムの適用可能期間は移植後6週間程度までである。それ以後は株間方向の推定精度が低下する。
4. 欠株がある場合、または株が一つだけ大きくずれている場合は周りの株との関係から架空の株位置が計算される。
[具体的データ]
 
 
[その他]
研究課題名: 減農薬のためのハイブリッド除草技術の開発
予算区分: 軽労化農業
研究期間: 2000〜 2002年度
研究担当者: 西脇健太郎、天羽弘一、冨樫辰志、松尾健太郎
発表論文等: 1)西脇ら (2001) 農機 平成13年度全国大会講要:371-374.
2)K.Nishiwaki et al.(2001) ASAE Paper No.013103:1-8.
3)特許出願(西脇ら)作物位置検出アルゴリズム(特願2001-301195)