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セル成型苗、不耕起、養液土耕栽培によるキュウリの年3作体系


[要約]

 キュウリのセル成型苗、不耕起、養液土耕を組合せた年3作体系は、慣行の年2作体系より増収となり、施肥量の削減も可能である。また、果実100kg当り経費が低く、時間当り所得も高く、農業所得が向上する。

[キーワード]

キュウリ、不耕起、セル成型苗、養液土耕、短期栽培

[担当]宮城農園研・園芸栽培部・野菜チーム
[連絡先]022-383-8132
[区分]東北農業・野菜花き(野菜)
[分類]技術・普及


[背景・ねらい]

 宮城県内の施設キュウリ栽培は促成又は半促成(春作)と抑制栽培(秋作)を組合せた年2作体系で行われている。しかし春作、秋作のいずれにおいても栽培期間は5〜6ヶ月にわたり、収穫後期には草勢が低下しやすく、可販収量も減少する事例が多い。年3作体系を導入することにより生育後期の可販収量の維持が見込めるものの、作付回数の増加に伴う育苗や圃場の耕起作業を省力化する必要がある。そこでセル成型苗、不耕起、養液土耕栽培によるキュウリの年3作体系を確立する。

[成果の内容・特徴]

1.

キュウリのセル成型苗、不耕起、養液土耕を組合せた1〜2月定植・6月定植・9月定植の年3作体系は、慣行の年2作体系より増収となる(図1)。

2.

養液土耕における窒素施肥量は各作付期間均等に一日当たりN−17.5g/aが適当で、収穫期間中の土壌溶液EC値は0.5ds/m程度である。(図2)。収穫期間中の土壌溶液の硝酸イオン濃度は約200ppm程度である(データ省略)。

3.

養液土耕により施肥窒素の利用率が高まり、慣行栽培にくらべ施肥量の削減が可能である(表1)。

4.

キュウリのセル成型苗、不耕起、養液土耕を組合せた年3作体系では、慣行の年2作体系に比較し、果実100kg当り経費が低く、時間当たり所得も高く、農業所得が向上する(表2)。

[成果の活用面・留意点]

1.

夏秋期に定植する作期ではセル成型苗の直接定植とし、冬期間に定植する作期では早期収穫の点からポット苗を利用する。

2.

キュウリの根域は浅く横に広がりやすいので、かん水用のドリップチューブは1ベッド当り2本設置する。

3.

養液土耕ではハウス内が乾きやすいので、通路散水等によりハウス内湿度を保つ。

4.

養液土耕装置の導入にあたっては、生産費の面から20a以上の作付面積が望ましい。

5.

根こぶセンチュウ防除等の点から年次計画で土壌消毒を行い、ハウス利用を図る。

[具体的データ]

耕種概要:
 キュウリ「シャープ1」を供試し、養液土耕で2月上旬定植(ポット苗)・6月初旬定植(セル成型苗、不耕起)・9月初旬定植(セル成型苗、不耕起)の連続栽培を行った。各作付時期に1日当りのN施肥を8.8g/a(少肥料区)、17.5g/a(中肥料区)、26.3g/a(多肥料区)の区を設けた。対照として2月上旬及び8月上旬定植の慣行区(ポット苗、施肥も化成肥料による慣行施肥)を設けた。123〜139株/a、1条植えで2本主枝仕立て。低温期は最低13℃に加温。

[その他]
研究課題名:

寒冷地における野菜施設利用の効率化と省力・低コスト、高品質生産技術の確立

予算区分:

国庫(新技術)

研究期間:

1998〜2000年度

研究担当者:

鹿野弘、岩崎泰永、上山啓一、大沼康

発表論文等: なし

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