研究所トップ研究成果情報平成14年度

いもち病に強い良食味水稲新品種「ちゅらひかり」

[要約]
水稲「ちゅらひかり」は、「ひとめぼれ」熟期の中生の晩に属する粳種である。いもち病、特に穂いもちに強いため、減農薬栽培が可能である。良食味で耐倒伏性、耐冷性が強く、収量性はやや多収である。沖縄県で奨励品種に採用予定である。
[キーワード]
  水稲、ちゅらひかり、いもち病、減農薬栽培、良食味、耐倒伏性
[担当]東北農研・水田利用部・稲育種研究室
[連絡先]電話0187-66-2773、電子メールmyama@affrc.go.jp
[区分]東北農業・水稲、作物・稲
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
現在普及している「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「あきたこまち」等の良食味品種の大部分はいもち病抵抗性が不十分なため、栽培には農薬による防除が不可欠である。一方、消費者の減農薬に対するニーズは高まっており、これに応えるために、生産者が手間をかけていもち病に弱い品種を減農薬で栽培するケースが増えている。
そこで減農薬栽培の普及を促進するために、いもち病に強く、「ひとめぼれ」、「あきたこまち」に匹敵する良食味の品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 「ちゅらひかり」は、1989年に食味が良い「ひとめぼれ」といもち病に強い「奥羽338号」を交配して、その後代より育成した系統である。
2. 出穂期と成熟期は、育成地では「ひとめぼれ」、「はえぬき」に近い“中生の晩”に属する。「ひとめぼれ」よりも稈長が短く倒伏に強い。
3. いもち病抵抗性遺伝子型はPiaPiiと推定され、抵抗性は葉いもち、穂いもちとも、従来より東北地域で抵抗性が強い指標とされてきた「トヨニシキ」より強い“強”(東北地域新基準で判定)である。(表1表2)。
4. 葉及び穂いもち防除栽培の収量を100としたときの無防除栽培の収量は、「ひとめぼれ」で78.7であるのに対して「ちゅらひかり」では91.3である(図1)。また、無防除栽培での穂いもち罹病籾率は、「ちゅらひかり」で2.2%、「ひとめぼれ」で12.2%である。
5. 耐冷性は「ひとめぼれ」と同等の“極強”で、穂発芽性は“中”、白葉枯病抵抗性は“中”である。玄米収量は「ひとめぼれ」並かそれ以上である(表1)。
6. 炊飯米の食味は「ひとめぼれ」に匹敵する“上中”で(表3)、玄米品質は「ひとめぼれ」よりやや劣る“上下”である(表1)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 沖縄県で、いもち病と倒伏が問題となっている「ひとめぼれ」の一部に替えて奨励品種に採用、2004年より150ha程度の普及が見込まれる。
2. 倒伏には強いが、多収をねらって多肥栽培を行うと食味の低下をまねく可能性がある。施肥量を適量にとどめ、良食味、良質米づくりを心がける。
3. 穂発芽性が“中”であるため、倒伏、刈り遅れに注意する。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 水稲の革新的育種法の開発及びいもち病抵抗性品種の育成
予算区分: 交付金
研究期間: 1989〜2002年度
研究担当者: 山口誠之、横上晴郁、片岡知守、中込弘二、滝田正、東正昭、加藤浩、田村泰章、小綿寿志、小山田善三、春原嘉弘