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土壌腐植含量を指標とした大豆の一筆圃場内生育量変動予測

[要約]
大豆の栄養成長は耕起後の圃場表面土壌の乾土効果、腐植含量、全窒素含量に依存することから、土壌腐植含量を指標として大豆の播種密度を制御することによって大豆の生育ムラを解消することが可能である。
[キーワード]
  土壌肥沃度、乾土効果、腐植含量、大豆栄養成長、栽植密度
[担当]東北農研・地域基盤部・土壌環境研
[連絡先]電話019-643-3464、電子メールyukihiro@affrc.go.jp
[区分]東北農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
土壌は作物への養分の大きな供給源である。よって、圃場を精密に管理して作物を均一かつ理想的に生育させるためには、土壌の養分供給量を測定し、それを補う肥培管理を行うことが作物の安定生産のみならず施肥効率の向上や環境保全にもつながる。そこで、大豆の一筆圃場内での生育ムラを解消するための指標として、大豆の生育に最も影響するセンシング可能な土壌の化学性を検討する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 栄養生長量は耕起後の圃場表面土壌の乾土効果、腐植含量、全窒素含量に依存する(表1図1)。しかし、土壌pH、交換性ミネラル類、可給態リン酸、可給態鉄には依存せず(データ省略)、供試圃場では、これらは大豆の生育の制限要因ではなかった。
2. 茎重と乾土効果との相関が高いことから(表1)、大豆の栄養成長は土壌窒素肥沃度に依存するものと考えられる。しかし、同じく相関が高く、近赤外光でセンシング可能な腐植含量を指標とする。
3. 表土の腐植含量によって大豆栄養成長量の一筆圃場内での相対的なムラは予測できるが、腐植含量と栄養成長量との関係は品種や年次によって異なる(図1)。
4. 大豆の場合、生育量が旺盛となると収量が頭打ちとなる場合があるため(図2)、表土腐植含量と収量との関係は、必ずしも明確ではない。
5. 耕起後表土腐植含量を指標として窒素施肥量及び播種密度を変えて栽培した結果、窒素増施の効果は認められなかったが、播種密度の効果は認められた(図3)。よって、一筆圃場内での大豆の生育ムラは、耕起後の表土腐植含量を指標として播種密度を制御することによって解消できる。
[成果の活用面・留意点]
 
(1) 本成果は多湿黒ボク土に適用できる。
(2) 大豆栄養成長量の絶対値の予測はできない。
(3) 大豆収量の予測はできない。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 土壌肥沃度等の土壌化学性センシング技術の開発
予算区分: 軽労化農業
研究期間: 2000〜2002年度
研究担当者: 田村有希博