| [背景・ねらい] |
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東北地域の稲作において、いもち病の発生予察技術は現在、巡回調査やアメダスデータに基づく予察技術が基幹となっている。いもち病は冷害年に多発し、その被害も甚大であるため、既存の予察技術を補完するものとしてリモートセンシング技術による広域診断技術の確立が期待されている。リモートセンシング技術は、葉いもちの広範囲にわたる被害評価、発生予察および圃場の定点調査、巡回調査の効率化に貢献できる。また、航空機多波長域走査センサは、高い地上分解能をもつことから圃場レベルでの被害診断が可能である。 |
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| [成果の内容・特徴] |
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| 1. |
航空機多波長域走査センサ(J-SCAN-AT-AZM:中日本航空(株))で測定した圃場を、葉いもち特性試験調査基準によって発病程度を0〜10の11段階で達観調査した(表1)。6月下旬から7月にかけて葉いもち感染好適条件が多発したことから、観測圃場全体で葉いもちが発生していた。圃場によっては、ずりこみ症状がみられるところもあり発病程度は0〜8であった。 |
| 2. |
計測データのBand 6 / Band 3(バンド6とバンド3の比演算値)は、発病程度に比例して大きくなった(図1)。この比演算値により葉いもちの発病程度が識別できる。 |
| 3. |
計測範囲の水田圃場を抽出し、Band 6 / Band 3の比演算値に応じて色を割り付けると、発生圃場および発病程度を識別できる(図2)。 |
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| [成果の活用面・留意点] |
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| 1. |
計測は、雲のない快晴時で太陽高度の高い時間帯に限られる。 |
| 2. |
航空機多波長域走査センサと同等の解像度をもつ衛星(IKONOS、Quick Birdなど)でも代用可能と考えられる。 |
| 3. |
発病程度1程度の発病は識別できない(図1)。 |
| 4. |
この比演算値で、穂いもちの発病程度を識別できるかどうかは不明である。 |
| 5. |
バンド5(641.2-654.7nm:橙色)とバンド8(921.0-987.0nm:近赤外)の比演算により葉緑素濃度や正規化植生指数(NDVI)も算出できるので、イネの栄養診断やいもち病への感受性の評価にも応用できる。 |
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