| [背景・ねらい] |
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近年、遊休水田活用のため稲発酵粗飼料(イネホールクロップサイレージ、イネWCS)の利用が奨励されている。また、米ヌカは我が有数の自給濃厚飼料である。ビタミンEの飼料中への添加が肉質向上に効果があり、ビタミンEを豊富に含む飼料の給与でビタミンE濃度が高まることが知られている。イネWCSおよび米ヌカもビタミンEを70〜80mg/kg程度含む。そこで、イネWCSおよび米ヌカの給与が、血液、組織(肝臓)および牛肉中のビタミンE(α−トコフェロール)濃度に及ぼす影響について検討した。 |
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| [成果の内容・特徴] |
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| 1. |
米ヌカの給与は、市販配合飼料およびトウフ粕の給与よりも血液中のα−トコフェロール濃度を高める(表1)。 |
| 2. |
(1)イネWCS(原物約7kg)と市販配合飼料(約6kg)、および、(2)イネWCSと米ヌカ(1kg)、玄米(2.5kg)、市販配合飼料(約2.5kg)の黒毛和種去勢牛への給与では、(3)稲ワラ(約1kg)と配合飼料(約7kg)の慣行の肥育よりも、血液中のα−トコフェロール濃度が高く推移し、特に、米ヌカ、玄米を給与する(2)で高い(図1)。イネWCSの摂取量の多い牛が、また、米ヌカ、玄米の摂取量の多い牛が血液中α−トコフェロール濃度が高い(図2)。なお、イネWCS中のα+γトコフェロール含量は茎葉部で原物中約50mg/kgで、ホールクロップ全体の乾物中含量に換算するとおおよそ80mg/kgとなる。 |
| 3. |
イネWCSおよび米ヌカを8〜10カ月間給与すると、で肝臓中α−トコフェロール濃度が高まる。また、牛肉中(半腱様筋)のα−トコフェロール含量も高い傾向にある(表2)。 |
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| [成果の活用面・留意点] |
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| 1. |
イネWCSおよび米ヌカの給与では、牛肉の肉質向上のための飼料中ビタミンE添加量を少なくできる。 |
| 2. |
一般にトコフェロール含量が多い粗飼料では、βカロテン含量も多い傾向にあり、ビタミンA制御による肥育ではこの点に配慮する必要がある。一方、イネWCS中のトコフェロール含量はサイレージの調製条件によって変動する可能性がある。 |
| 3. |
米ヌカはリンが多いため、リンとカルシウムのバランスに気をつける必要がある。 |
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