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稲発酵粗飼料と米ヌカの給与は肥育牛の血中ビタミンE濃度を高める

[要約]
肥育牛への稲発酵粗飼料(イネホールクロップサイレージ)の給与は血液中のビタミンE(α−トコフェロール)濃度を高めるが、米ヌカを合わせて給与することで濃度はより高まる。また、肝臓中の濃度も高まる。
[キーワード]
  動物栄養、肉用牛、稲発酵粗飼料、米ヌカ、ビタミンE
[担当]東北農研・畜産草地部・栄養飼料研究室
[連絡先]電話019-643-3543、電子メールshino@affrc.go.jp
[区分]東北農業・畜産、畜産草地
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
近年、遊休水田活用のため稲発酵粗飼料(イネホールクロップサイレージ、イネWCS)の利用が奨励されている。また、米ヌカは我が有数の自給濃厚飼料である。ビタミンEの飼料中への添加が肉質向上に効果があり、ビタミンEを豊富に含む飼料の給与でビタミンE濃度が高まることが知られている。イネWCSおよび米ヌカもビタミンEを70〜80mg/kg程度含む。そこで、イネWCSおよび米ヌカの給与が、血液、組織(肝臓)および牛肉中のビタミンE(α−トコフェロール)濃度に及ぼす影響について検討した。
[成果の内容・特徴]
 
1. 米ヌカの給与は、市販配合飼料およびトウフ粕の給与よりも血液中のα−トコフェロール濃度を高める(表1)。
2. (1)イネWCS(原物約7kg)と市販配合飼料(約6kg)、および、(2)イネWCSと米ヌカ(1kg)、玄米(2.5kg)、市販配合飼料(約2.5kg)の黒毛和種去勢牛への給与では、(3)稲ワラ(約1kg)と配合飼料(約7kg)の慣行の肥育よりも、血液中のα−トコフェロール濃度が高く推移し、特に、米ヌカ、玄米を給与する(2)で高い(図1)。イネWCSの摂取量の多い牛が、また、米ヌカ、玄米の摂取量の多い牛が血液中α−トコフェロール濃度が高い(図2)。なお、イネWCS中のα+γトコフェロール含量は茎葉部で原物中約50mg/kgで、ホールクロップ全体の乾物中含量に換算するとおおよそ80mg/kgとなる。
3. イネWCSおよび米ヌカを8〜10カ月間給与すると、で肝臓中α−トコフェロール濃度が高まる。また、牛肉中(半腱様筋)のα−トコフェロール含量も高い傾向にある(表2)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. イネWCSおよび米ヌカの給与では、牛肉の肉質向上のための飼料中ビタミンE添加量を少なくできる。
2. 一般にトコフェロール含量が多い粗飼料では、βカロテン含量も多い傾向にあり、ビタミンA制御による肥育ではこの点に配慮する必要がある。一方、イネWCS中のトコフェロール含量はサイレージの調製条件によって変動する可能性がある。
3. 米ヌカはリンが多いため、リンとカルシウムのバランスに気をつける必要がある。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: ホールクロップサイレージ用イネによる地域資源型肉牛生産技術の開発
予算区分: 21世紀3系
研究期間: 1999〜2001年度
研究担当者: 篠田満、櫛引史郎、新宮博行、上田靖子、嶝野英子