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放牧牛の排糞は草地構成種の種子繁殖に貢献する

[要約]
放牧草地において排糞周囲に形成される不食過繁地は、一定期間牛の採食が忌避され草種の種子生産が確保される場となる。また、放牧牛の採食・排糞行動はそこで生産された植物種子の散布を通じて構成草種の種子繁殖に貢献する。
[キーワード]
  永年草地、放牧、種子繁殖、草地生態、排糞、不食過繁地、糞中種子
[担当]東北農研・畜産草地部・放牧管理研究室
[連絡先]電話019-643-3562、電子メールfukudae@affrc.go.jp
[区分]東北農業・畜産、畜産草地
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
放牧地において牛の排糞周囲は採食されず不食過繁地が形成される。しかし、時間の経過に伴い不食過繁地は再び採食されるようになる。そこで放牧牛の採食・排糞行動がもたらす草種の維持に果たす役割を不食過繁地の存在と糞中および表土中からの種子の発芽の様相から解明して、多様性の高い草地の創出及び管理技術の開発に資する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 2つの無施肥草地(各0.6ha)に8年間日本短角種成牛各1頭を5月から10月まで放牧し、不食過繁地が生ずる糞有り区とそれを抑えるために毎日排糞を除去する糞無し区とした。8年目にシバ優占となった草地の開花、結実個体数、排糞中および埋土種子の組成と量を調査した。
2. 糞有り区の不食過繁地では一般に多くの種で開花、結実個体数が多くなり、各草種の種子の生産が確保される(表1)。
3. 排糞中からの発芽実生数は多くの草種で糞有り区が多い。その総出現種数も糞有り区は糞無し区より多い(図1
4. 種子繁殖を不食過繁地に依存するシバ、シロクローバ、ウシハコベは排糞中からの実生が出現する期間が糞有り区でより長くなる(図2)。シバは両区とも糞中実生数全体の約8割を占め、7月上中旬にそのピークを示す。
5. 埋土種子の6月 8月の各月の出現種数は糞有り区が糞無し区より多く、その発芽実生数も一般に多くの種は糞有り区で多い(表2)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 放牧家畜の採食・排糞行動を利用した草種の多様性に富む低投入持続型草地の創出および管理技術開発の参考となる。
2. 本成果は、強放牧圧の定置放牧条件下での結果であるので、低放牧圧あるいは輪換放牧条件下では異なる結果が得られる可能性がある。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 放牧牛の排糞が草地の種多様性と生産性に及ぼす影響
予算区分: 交付金
研究期間: 1997-2001年度
研究担当者: 福田栄紀、目黒良平、八木隆徳