| [背景・ねらい] |
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リン肥料の原料となるリン鉱石は枯渇が懸念される地下資源である一方で、リン肥料は、作物が吸収利用できる5〜10倍もの量が施用されており、結果として単にリン資源が浪費されるだけでなく、施設栽培ではリンが土壌中に蓄積し過剰障害を起こしたり、さらには農地から流亡して水質汚染の原因となる可能性がある。
そこで施肥効率の高いリン施肥法を開発するため、作物の根に確実にリンが供給されるよう定植前のスィートコーン苗に直接リン酸溶液を与える施肥法を考案し、その有効性を検討した。 |
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| [成果の内容・特徴] |
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| 1. |
128穴セルを用いて第4葉が抽出するまで育苗したスィートコーンセル成形苗をPとして1%のリン酸カリ水溶液(KH2PO4:K2HPO4=3:1, pH=6.2)に1時間浸漬した後、リン施肥量を削減した圃場に定植する。なお浸漬時に各セルあたり約10mLの処理溶液を吸収するので,約100mgのリンを施用したことになり,これは慣行施肥量の8%に相当する。なお,本研究を行った圃場は、リン酸吸収係数19.9g kg-1、可給態リン酸(Bray2)0.14g kg-1の淡色黒ぼく土畑で、前々作にソルゴー、前作には小麦を青刈り栽培した。 |
| 2. |
定植前にリンの浸漬処理を行うことで総リン施肥量を慣行の8%にまで削減しても慣行並の収量が得られ(図1)、リンの利用効率は67%にまで向上する(図2)。定植前のリン浸漬により、生育初期に十分量のリンが吸収され、初期生育が大幅に促進されたことがこの要因と考えられる(図3)。 |
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| [成果の活用面・留意点] |
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| 1. |
今後機械化技術を検討することで,減リン酸施肥栽培技術の確立が期待される。 |
| 2. |
定植前リン酸処理により高濃度障害が発生することがある。処理リン酸資材として粒状、粉状のリン酸肥料、水溶液状であってもリン酸アンモニウムを用いると高濃度障害が発生しやすい。また処理溶液のpHが低くなると障害が発生しやすい。定植後の土壌の乾燥によっても障害の発生が助長されるので十分に灌水する必要がある。 |
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