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ミクロスポンジフィルムを利用した簡易水耕法

[要約]
気体を透過し液体を透過しない微細な穴のあいたフィルムを水耕漕として利用することで、水耕液に酸素を供給することが可能である。電力装置を必要とせずに水耕栽培を行うことが可能となり、ほうれんそうを栽培した場合にはエアレーションを行わなかった場合より生育がよくなる。
[キーワード]
  ミクロスポンジフィルム、水耕、ホウレンソウ
[担当]東北農研・野菜花き部・野菜花き作業技術研究室
[連絡先]電話019-641-7136、電子メールyasuba@affrc.go.jp
[区分]東北農業・野菜花き(野菜)、野菜茶業・野菜栽培生理
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
水耕栽培の普及の問題点として設置コストが高いこと、電力を必要とし栽培期間中にも水耕装置自体のメンテナンスが必要なことが挙げられる。そこで水耕液循環の設備等を使用せずに根域に酸素供給することが可能な簡易水耕栽培法を開発する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 開発した簡易水耕装置(図1)は、気体を透過し液体を透過しない微細な穴を持つフィルムを水耕漕に用いた。
2. ミクロスポンジフィルム1m2当たり0.22μmol/sの速度で酸素の供給を行うことができる(図2)。また、溶存酸素濃度が低いときに酸素の供給量が多くなる性質がある。ミクロスポンジフィルムを通した水の蒸発により、水温は低下する傾向にある。
3. 6月に800cm2のミクロスポンジフィルムを用い、4リットルの水耕液で1装置2株のほうれんそうを栽培した場合には、30g程度まで生長させることが可能で(図3)、エアレーションを行わずに栽培したほうれんそうの2倍以上の地上部新鮮重となる。
4. 栽培期間中の水耕液の溶存酸素濃度はエアレーションを行わずに栽培した場合に比べて高くなる(図4)。栽培期間中の水耕液温はミクロスポンジフィルムを使用した場合の方が低くなる。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 市販されているミクロスポンジフィルムを用いて、水耕装置を自作することが可能である。
2. 1個体ずつ水耕栽培を行うことが容易であり、特に水耕液の循環により広がる地下部伝染性の病害が問題となる作物の栽培に適する。
3. 装置自体は軽量であり培地も使わないため、ベランダ園芸等にも適している。
4. フィルム自体はポリプロピレン製であり、紫外線に長時間当たると劣化する危険性があるため注意を要する。紫外線にさらさなければフィルムの劣化の危険性はなく、現在のところ1年以上は使用可能である。
5. ミクロスポンジフィルムの原価は1m2当たり300円程度であり、30g程度のほうれんそうを栽培するために必要なミクロスポンジフィルムの原価は2.4円/株(年5作栽培した場合)程度である。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: トマト、レタス、ホウレンソウ等の生育阻害要因の解析
予算区分: 交付金
研究期間: 2001〜2005年度
研究担当者: 安場健一郎、屋代幹雄、松尾健太郎