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青森県におけるリンゴの夏期病害虫防除回数の削減

[要約]
青森県の「りんご病害虫防除暦」では、夏期(7〜8月)、約10日間隔で6回の薬剤散布を行っているが、薬剤の効果的な使用により散布間隔を15日とし、防除回数を1回削減できる。
[キーワード]
  リンゴ、病害虫、防除暦、防除回数削減
[担当]青森りんご試・病虫肥料部
[連絡先]電話0172-52-2331、電子メールkozo_kawashima@ags.pref.aomori.jp
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
リンゴの病害虫防除において、環境への配慮、経費の削減、作業の軽減、消費者に対するイメージアップなどが求められている。防除暦における基準薬剤の散布回数も「削減」することが社会的な趨勢となっており、この方向で段階的な取り組みが行なわれている。夏期の防除においても、過去5年間個々の薬剤の防除効果の比較や現地での大規模実証試験を実施し、削減の可能性を検討している。
[成果の内容・特徴]
 
1. 防除暦で夏期の基幹となる殺菌剤(基準薬剤)をほぼ15日間隔で散布した場合、黒星病、斑点落葉病、すす斑病、すす点病では、従来の10日間隔の散布と同等の防除効果が得られる(表1に2002年の結果、評価は複数年の結果から判断)。
2. 炭疽病及び褐斑病では、一部の薬剤でやや防除効果が劣る(表1、*印)ことから、これらの薬剤については、多発条件下では防除剤として使用しない。ニセアカシアなどの伝染源が近くにあり毎年のように炭疽病が多発する園地、また、前年に褐斑病が多発したり、当年に多発する兆候がある園地では、基準薬剤の中から効果の優れた薬剤を選択する。
3. モモシンクイガの防除時期は6月中旬から9月上旬であり、従来10日間隔で防除している。7月初めに合成ピレスロイド剤を散布し、第1世代のふ化幼虫の果実食入を徹底的に阻止することで夏期の散布を15日間隔とすることができる。また、食入防止期間が25日以上ある合成ピレスロイド剤の場合は、次回の7月半ばの防除剤を省略できる(表2)。ただし、周辺にモモシンクイガの発生源があったり、自園で前年に被害が見られた場合は省略しない。
4. 7月初めに合成ピレスロイド剤を使用することで、キンモンホソガ及びリンゴコカクモンハマキも防除が可能であり、発生が多い場合はキンモンホソガでは7月末、リンゴコカクモンハマキでは8月半ばに防除剤を加用する。
5. 夏期の散布回数を削減する大規模実証試験を1998年から5年間、津軽及び南部地域5地点、延べ17回実施し、病害虫の発生において特に問題がないことを確認した。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 薬剤の散布予定日に降雨が予想される場合は、事前散布に徹し散布間隔が開かないようにする。
2. 夏期以降の薬剤散布は早生種の収穫期に注意し、薬剤の収穫前使用制限を遵守する。青森県の防除暦における8月末以降の基準薬剤は、収穫前日まで使用できる薬剤に限定している。
3. 病害虫の発生時期及び発生量は、年、地域、園地などによって異なるので、各種情報を参考とするとともに、発生状況を十分注意しながら適期・適正防除につとめる。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 環境保全に配慮した夏期のリンゴ病害虫防除回数削減
予算区分: 県単
研究期間: 1998〜2002年度
研究担当者: 雪田金助、櫛田俊明、赤平知也、對馬由記子、倉舘公子、木村佳子、石栗陽一、関田徳雄、藤田孝二、川嶋浩三
発表論文等: 1)倉舘ら (1999) 東北農業 52:187-188.
2)雪田ら(2000)北日本病虫研報 51:133-136.