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リンゴ腐らん病の粗皮感染と薬剤防除

[要約]
リンゴ枝幹での粗皮形成は7月中・下旬が最盛期であり、その形成に伴う樹皮亀裂部に病原菌が侵入・感染し、胴腐らんが引き起こされる。チオファネートメチル剤などの褐斑病防除剤を粗皮形成の最盛期に散布することにより胴腐らんを防除できる。
[キーワード]
  リンゴ腐らん病、粗皮形成、感染部位
[担当]青森りんご試・病虫肥料部
[連絡先]電話0172-52-2331、電子メールkinsuke_yukita@ags.pref.aomori.jp
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
リンゴ腐らん病では主幹、主枝、亜主枝などの大枝に発生する病斑を胴腐らんと呼んでいる。胴腐らんの感染・発病部位は大枝の整枝・剪定痕や徒長枝の剪去痕、雪害・台風被害などによる樹体損傷部、大枝の分岐部、粗皮など様々であるが、中でも粗皮は全体の3〜4割を占めるほど重要な位置にある。そこで、粗皮から腐らん病感染のメカニズムを明らかにし、効果的な防除対策を検討する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 粗皮の形成
粗皮は枝幹部における皮層及び表皮の自然な枯死に由来するもので,その形成はリンゴなど多くの木本植物にみられる。
1) リンゴ枝幹での粗皮形成は7月中・下旬頃が最盛期である(図1)。
2) 粗皮は初め淡褐色〜橙色で、周りの樹皮よりもやや隆起した状態で現れ、その境界部の樹皮には亀裂がみられるようになる(図2)。
3) 形成1か月後頃になると、境界部より内側の樹皮は枯死して乾燥し、それとともに全体的にやや陥没して、紫褐色〜暗褐色を呈するようになる(図2)。
4) 粗皮形成には明確な品種間差異がみられない(図3)。
2. 病原菌の感染・発病
1) 病原菌は粗皮形成に伴う樹皮亀裂部から侵入・感染し(以下、粗皮感染)、その年の10〜12月頃に褐色、火膨れ状の初期病斑を生じて、翌年の春に典型的な胴腐らんへと大きく拡大する。
2) 樹皮亀裂部の感受性期間は亀裂形成後1か月以内である。
3. 防除対策
粗皮感染は褐斑病防除剤のチオファネートメチル水和剤1,500倍(図4)又はベノミル水和剤3,000倍を7月の中旬又は下旬に散布することにより防除できる。
[成果の活用面・留意点]
 
1) スピードスプレーヤーで薬剤を散布する場合は、枝幹部にも十分な量の薬液が付着するように配慮しながら実施する。
2) 7月の中旬又は下旬の薬剤散布は褐斑病も同時に防除できる。
3) 粗皮感染の単独防除とする場合は、7月中旬と7月下旬の2回、上記薬剤による胴木洗いが最も効果的である。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: リンゴ腐らん病に対する樹体抵抗性発現機構の解明と簡易防除法の確立
予算区分: 県単
研究期間: 1998〜2002年度
研究担当者: 雪田金助
発表文献等 1)雪田金助(2002) 北日本病虫研報 53:105-108.