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観光リンゴ園(わい化栽培)に適したカバークロップの種類と定植方法

[要約]
観光リンゴ園(わい化栽培)の雑草管理として、カバークロップ「リシマキア」「ヒメイワダレソウ」の利用が適する。カバークロップは水稲用育苗箱を用いてマット状に繁殖させ、不織布のマルチ資材と併用して定植する。
[キーワード]
  カバークロップ、リンゴ、栽培、雑草管理
[担当]宮城農園研・園芸栽培部・果樹チーム
[連絡先]電話022-383-8132、電子メールmarc-kk@pref.miyagi.jp
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
リンゴわい化栽培における雑草管理では、刈払い機を用いた樹冠下での作業が困難であるため、除草剤を使用することが多いが、環境への影響などから除草剤を使用しない雑草管理法が求められている。来園者用に美しい景観が求められる観光果樹園では、草丈の低いカバークロップの利用が考えられるので、繁殖速度が速く、草丈の低い種類とその定植方法を検討する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 入するカバークロップは、多年生で草丈が低く、繁殖速度の速い「リシマキア」や「ヒメイワダレソウ」とする(表1)。
2. バークロップの育苗には水稲用育苗箱を用いる。育苗箱の底面に不織布を敷き、その上に培土を入れ、長さが10cmならば30本、30cmならば10本の挿し穂を挿す。挿し穂は全て覆土せず、先端を露出させると繁殖が速い。挿し芽時期は4〜5月とし、2ヶ月程度でカバークロップが育苗箱全面を被覆し、マット状苗が完成する。
3. 植前に、あらかじめ繊維密度の高い不織布(繊維密度:100〜150g/m2)をマルチ資材として樹冠下に設置しておく。定植にあたり、マルチ資材を育苗箱の大きさに合わせて切り取り、露出した土壌表面に定植する(図1)。定植時期は7月、マット状苗の定植間隔は1mとする。
4. バークロップは約4ヶ月で樹冠下のほぼ全面を被覆する(図2)。カバークロップによる樹冠下の被覆が完了すると、草刈り等の雑草管理は必要ない。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 被隠性は、「リシマキア」が「ヒメイワダレソウ」より優れる。
2. 織布のマルチ資材は、カバークロップが樹冠下を全面被覆するまでの期間に雑草を抑える役割があり、耐用性が4ヶ月以上のものを選ぶ。
3. 実の着色管理に用いる反射シートは、カバークロップ上に1ヶ月程度敷いても、カバークロップの生育には影響を与えない。
4. リシマキア」「ヒメイワダレソウ」は一般の園芸店で入手することができる。
5. バークロップ導入1年目には10aあたり33万円程度の経費がかかる(表2)。仮に減価償却期間を5年と見込んでも、1年当たり6万円程度かかるため、カバークロップ導入によって「減農薬」や「除草剤未使用」等の付加価値が得られる園地に導入する。また、カバークロップを計画的に小規模ずつ導入したり、自園の畑土等を利用することで経費を節減することができる。
6. 木園における施肥は、慣行通りの量とし、カバークロップ表面に施用する。
7. そ被害のある園地ではカバークロップを導入しない。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: ンゴわい化栽培におけるJM台木等を利用した低樹高省力型栽培技術の開発
予算区分: 技術
研究期間: 999〜2002年度
研究担当者: 江恵美子、菊地秀喜、池田裕章、伊藤博祐
発表論文等: 江ら(2002) 東北農業研究 55: