| [背景・ねらい] |
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近年、秋田県のニホンナシ栽培園においてキクイムシ類の被害が増加し、急激な樹勢の低下や枯死する樹が見られている。しかし、本害虫はニホンナシにおける加害種と発生生態が不明なため、有効な防除対策がない。そこで、加害種とその見分け方を明らかにし、発生生態解明のための基礎資料とする。 |
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| [成果の内容・特徴] |
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| 1. |
ニホンナシへの食入が確認された種は、森林総合研究所東北支所による同定の結果、ハンノキキクイムシ、サクセスキクイムシ、アカクビキクイムシ、クワノキクイムシ、サクキクイムシ、トドマツオオキクイムシ、サクラノホソキクイムシの7種である(表1)。 |
| 2. |
場内のニホンナシ326樹を対象に被害状況を調査した結果、72樹(22.1%)でキクイムシの加害が認められている。同一樹に数種のキクイムシによる加害も認められるが、主な加害種は、ハンノキキクイムシ(90.3%)で、次ぎにサクセスキクイムシ(27.0%)が多い。トドマツオオキクイムシなど他5種による加害は非常に少ない(表2)。 |
| 3. |
ハンノキキクイムシ(図1)は体長約2mm、短円筒形で、光沢をもつ黒色である。食入孔の大きさは直径約1mmで、食入すると線香状に固められた木屑(フラス)を排出する。サクセスキクイムシ(図2)は体長約2mmで細長く、少し光沢をもつ茶褐色〜黒褐色である。食入孔の直径は1mm以下でハンノキキクイムシのものより小さい。また、食入後に粉状の細かい木屑を排出する。トドマツオオキクイムシはハンノキキクイムシを大きくした容姿で、体長、食入孔ともに7種のキクイムシの中で最も大きい。食入後に排出される木屑は、粗い繊維状で、一部は短い円筒状である(表1)。 |
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| [成果の活用面・留意点] |
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| 1. |
ニホンナシに対する加害時期を明らかにする必要がある。 |
| 2. |
地域による優占種の差異を明らかにする必要がある。 |
| 3. |
有効な登録薬剤がないため、早期に防除剤の選抜が必要である。 |
| 4. |
継続して生態を詳細に調査し、防除時期と防除方法を明確にする必要がある。 |
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