| [背景・ねらい] |
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果樹園の施肥や地表面管理に関する試験においては、地下部の調査は概ね深さ40cm程度までであり、深層での土壌養水分の動態や地下に溶脱する土壌中の養分量はほとんど解明されていない。近年、農地においても環境負荷の軽減が避けて通れない情勢から、施肥養分等の溶脱抑制を考慮した肥培管理技術の確立が急務となっている。
地表面管理としては一般的な草生(ペレニアルライグラス)、清耕、稲わらマルチの3区を長期にわたり設定し、各区深さ1m前後までの養水分の動態を解析するとともに年間の養分収支を行った。 |
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| [成果の内容・特徴] |
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| 1. |
土壌中の養分は施肥由来のものも含めて、そのほとんどは土壌水とともに移動する。水の動きは動水勾配と透水係数の積で求める動水勾配法と樹体や地表面からの蒸発散量、降水量、土壌中の貯留水の増減量から求める水収支法の2つの方法で算出した結果、動水勾配法と水収支法で算出される水移動量は、相関が高い。一年間に地下へ流去する水分量は、1999年〜2000年の年平均降水量1,400mmのうち草生、清耕の両区で520mm前後、わらマルチ区で750mmである(図1)。 |
| 2. |
窒素、石灰、苦土の年間流亡量は、草生区が著しく少なく、マルチ区と清耕区で多い(表1)。 |
| 3. |
表層部の硝酸態窒素濃度は窒素施肥により上昇し、その様相は清耕区と草生区で顕著であるが、マルチ区では年間の硝酸態窒素の変化が小さい。これはマルチしたわらと土壌との接触部で微生物による窒素の吸収と放出があるためと推察される。土壌溶液濃度の年間変動は硝酸態窒素も含めて、深層部では小さく、区ごとにほぼ一定値で推移している(図2)。 |
| 4. |
年間の養分収支を計算した結果、草生区は「支」の養分が少なく、その量も最も少ないことから、草生が土壌悪化の防止に最も有効である(表2)。 |
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| [成果の活用面・留意点] |
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| 1. |
動水勾配法は水収支法と比較して調査が簡便であることから、土壌養分流亡量を算出するための水移動量測定に役立てることができる。 |
| 2. |
各地表面管理別に土壌養分溶脱量が判明し、合理的な肥培管理に役立てることができる。特に、流亡の少ない草生法を多く取り入れることで環境にやさしい、低コストな栽培技術確立に貢献できる。 |
| 3. |
樹冠下の管理においては、若木の段階では特に養水分競合が大きいのでマルチとし、また、肥沃度の高い園地では清耕で管理し、施肥により樹勢調節を行う。 |
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