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中山間地域等直接支払制度による集落活動の特徴

[要約]
“農業生産”と“多様性発揮”の両面でとくに先進的な集落では、中山間地域等直接支払制度を活用し、早い時期から担い手の定着に関する活動を重点的に実施しており、今後は比較的後進的な集落への波及が課題である。
[キーワード]
  中山間地域、直接支払、集落活動
[担当]岩手農研・企画経営情報部・農業経営研究室
[連絡先]電話0197-68-4404、電子メールy-Imura@pref.iwate.jp
[区分]東北農業・経営
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
本制度は、平成12年度から5カ年の予定で対象集落等へ交付金が支払われる制度であるが、制度を活用した集落活動の特徴については個別事例の紹介にとどまっているものが多い。そこで、岩手県において活動に取り組む1,318集落(平成13年度)のうち66集落について、集落活動の特徴を類型別に捉えようとするものである。
[成果の内容・特徴]
 
1. 調査集落は、一般的にどのような集落と認識されているかという視点で、県の出先機関等の担当者が12項目・5段階で付けた評点に基づいて、主成分分析により“農業生産”(A-a軸)と“多様性発揮”(B-b軸)の2軸で示す平面上に位置付けられ、さらに、クラスター分析によりAB型(12集落)・Ab型(11集落)・aB型(30集落)・ab型(13集落)の各類型に分類できる(図1表1)。
2. 集落類型別の活動の特徴(表2表3
(1) “農業生産”と“多様性発揮”の両面でとくに先進的な集落(AB型)では、「水路の管理」「農道の管理」といった基本的な農業生産活動に加え、「認定農業者の育成」「堆きゅう肥の施肥」といった項目の締結率が全体より高い。また、制度導入後の早い時期から「認定農業者の育成」といった担い手の定着に関する活動を重点的に実施しており、今後は「機械等の共同購入」「堆きゅう肥の施肥」等の重点化も見込まれる。
(2) “農業生産”の面でとくに先進的な集落(Ab型)では、基本的な農業生産活動の他に、「担い手への集積」「堆きゅう肥の施肥」といった項目の締結率が高く、AB型に準じて多様な項目で協定を締結している。また、「機械等の共同購入」といった生産性等の向上に関する活動や「堆きゅう肥の施肥」については、これまで全体より重点的に実施しており、今後も継続して重点的に実施する見込みである。
(3) “多様性発揮”の面でとくに先進的な集落(aB型)は、調査集落の中では平均的な集落類型であり、全体的な傾向と同じく「水路の管理」「農道の管理」「農地法面の点検」といった基本的な農業生産活動について協定を締結し、これまで重点的に実施している。
(4) “農業生産”と“多様性発揮”の両面で比較的後進的な集落(ab型)では、「水路の管理」「農道の管理」「農地法面の点検」といった項目の他に、「周辺林地の草刈り」の締結率が高く、かつ重点的に実施してきている。また、今後は「水路の管理」「農道の管理」を継続して重点的に実施すると見込まれるが、担い手の定着に関する活動の気運も見受けられることから、先進的な集落(AB型等)を参考とした活動の促進や、そのための関係機関による支援が課題と考えられる。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 調査集落(66集落)は活動が比較的目立つ集落を選定していることや、後進集落(ab型に準ずる集落)における活動促進の必要性を踏まえ、支援を充実すること。
2. 各集落における活動の効果とその要因については別途検討が必要であること。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 中山間地域等直接支払制度の活用方策の解明
予算区分:
研究期間: 2001〜2003年度
研究担当者: 井村裕一