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折衷直播は、耕起後の畑状態の圃場に播種(砕土・施肥・播種・覆土・鎮圧同時作業)した後、早期に湛水することにより出芽・苗立ちの安定化を図る方式である。労働時間を慣行移植と比較すると、育苗管理と代かきの省略により春作業時間が大きく短縮される(図1)。中間管理作業時間は移植をやや上回るが、全体では1/3以上の時間短縮が可能であり、省力効果が高い。 |
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大豆とえだまめの収量を、圃場の前歴が折衷直播(無代かき)の場合と湛水直播(代かき)の場合で比較すると、前者で砕土率と排水性が向上して生育が良好となり、増収する(図2)。 |
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慣行移植水稲+大豆の作付体系に、折衷直播とえだまめを加えることで経営規模の拡大を可能にし、所得の増加が期待できる(表1)。また、家族労働力も有効利用される。 |
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県南内陸部の平鹿町では、稲作を基幹としながら、畜産、果樹、野菜の生産も多く、複合経営の担い手が比較的多い。このような地域で、更に複合経営を強化するには、合理的な水田利用が重要となるが、将来委託側へ回る可能性の高い農家も少なからず存在している。そこで、1集落(あるいは数集落)の稲作と転作(大豆)を、数戸の受託農家集団が行う土地利用型営農体系を想定する(図3)。
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折衷直播を導入することにより、少ない担い手で、地域の農地を維持できるばかりでなく、畑地化が促進されることで、転作の生産性が向上する。 |
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土地利用調整組織が十分に機能することで、計画的な田畑輪換の実施が可能となる。 |
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副業的兼業農家の潜在労働力は、労働力利用調整組織の斡旋により、集落内外の野菜・果樹の農家・生産組織に供給されることで、複合部門の生産が拡大する。 |
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集落営農による土地利用を基礎としながら、農業関連施設・機関の機能を最大限に発揮させることで、町全体として、多品目生産による産地化を目指す。こうした生産方式(農業システム)の実現が、複合経営地域における農業の振興につながる。 |