研究所トップ研究成果情報平成14年度

生産者の意識調査からみた水稲直播栽培の定着化と課題の変化

[要約]
近年の山形県内における水稲直播栽培は経営内で定着傾向にある。その要因として、播種方式の変化や技術確立により収量が移植栽培並に近づいたことがあるが、一方で、機械の導入により低コスト化が進まないなどの経営上の課題や雑草及び鳥害対策が問題点の中心に変化してきている。
[キーワード]
  水稲直播栽培、播種方式、移植栽培並、問題点
[担当]山形農試・総合研究部
[連絡先]電話023-647-3500、電子メールendohiroyu@pref.yamagata.jp
[区分]東北農業・経営
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
山形県における水稲直播栽培面積は平成8年の395haから平成14年には750haと増加している。今後、直播栽培の導入により稲作経営の効率化を図るためには、普及定着の過程で変化する課題をとらえて一層の普及支援を行う必要がある。そこで、直播栽培実施生産者へのアンケート調査を実施し、平成8年調査結果との比較から、生産者がとらえる直播栽培の特徴の変化を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
 
1. 水稲直播栽培を実施している経営における直播栽培面積は、平成8年は60a以下が中心であったが、平成14年では1ha以上が多くなっている(図1)。また、栽培者の経験年数も長くなり(表2)、直播栽培の経営内定着が進んでいる。
2. 播種方式は背負動散利用の散播から条播・点播方式へ変化した(表3)。移植と比較した経費が「減った」という割合が小さくなるとともに、「変わらない」とする割合が大きくなった。この要因には播種機の新規購入等が考えられる。
3. 直播栽培の収量は(図2)、10a当たり450kg以下の層が少なくなり、500〜550kgの層が増加している。移植栽培の平均収量は、平成8年が596kg、14年が594kgであることから、直播栽培の収量は移植栽培並に近づいている。同時に、期待する収量も、「移植栽培と比較して30kg未満の減少」とする回答が中心的になり、移植栽培並みに近づいている。このことで、収量に関する問題点の重みは小さくなる一方で、雑草や鳥害が栽培上の中心的な問題点へと変化した。
4. 直播栽培の導入や定着の支援においては、雑草及び鳥害対策を中心とした生産技術の底上げのための指導や、収量安定につながる播種機購入にあわせて、共同利用や受委託の促進等による生産コスト低減を促すソフト的支援がより重要性を増すと考えられる。
[成果の活用面・留意点]
  水稲直播栽培の導入支援や技術指導上の参考とする。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 水稲直播栽培の導入実態(新技術・新品種技術導入事業)
予算区分: 国庫
研究期間: 2002年度
研究担当者: 遠藤宏幸
発表論文等: アンケート調査結果資料を刊行予定