| [背景・ねらい] |
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寒冷地における水稲湛水直播栽培では、暖地に比べて苗立ち率が劣るため、播種量を多くして苗立ち数を確保する必要がある。しかしながら、市販の代かき同時打ち込み点播機に搭載されている播種ロールで、必要播種量5kg/10a以上確保するためには、作業速度を慣行田植機の半分程度まで遅くしなければならず、作業能率の低下をまねく。そこで、播種ロールの改良を行うことにより、作業性の向上を図る。 |
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| [成果の内容・特徴] |
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| 1. |
市販の代かき同時打ち込み式点播機の播種ロール(以下通常3穴播種ロール)に、従来からある3ヶ所の播種穴に加え、新たに3ヶ所の穴を開けることで、播種量を十分に確保するとともに、作業性も向上できるように改良できる。具体的な播種ロール改良方法は以下の通り。(図1)
| 1) |
穴あけ位置は、通常3穴播種ロールの既存穴同士の中間位置(中心角で60°ずれた位置)とする。 |
| 2) |
穴開口部は既存穴と同じく18mm×13mmサイズ。穴の深さは、基材の厚さが7mmであるため、最大でも6mm程度にする。また、コーティング種子の詰まりを防ぐために、穴底はU字型にドリル等で削る。 |
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| 2. |
通常3穴播種ロールの場合、通常の作業速度0.4m/sで播種量が最大5kg/10a程度にとどまるのに対し、改良6穴播種ロールを用いることで、6kg/10a以上の播種量設定が可能となり、株間等諸設定においても自由度が高まる。また、慣行の田植機並みの作業速度0.8m/sで播種する場合でも6kg/10a程度の播種量を確保できる。(表1、図2) |
| 3. |
播種量6kg/10a設定において、代かき同時打ち込み点播機のha当たり作業時間は、通常3穴播種ロールで2.7時間であるのに対し、改良6穴播種ロールを用いた場合1.6時間と、6割に短縮できる。(表1) |
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| [成果の活用面・留意点] |
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| 1. |
作業速度が遅く、株間設定(ロール回転数)を10に近づけるほど、点播の株形成は不明瞭となり、条播に近い形状となる。 |
| 2. |
表面滞水が多い条件で0.8m/s以上の高速作業を行うと、隣接条が泥流をかぶり、苗立ち不良となることがあるため注意が必要であり、泥流防止機構のない代かき機を用いる場合には速度を0.6m/s程度に抑える。 |
| 3. |
新たな3穴には、過乾燥で砕けやすくなったコーティング種子の使用や、作業時の播種部への雨水浸入等、条件によっては、カルパー剥離粉末付着の恐れがある。 |
| 4. |
播種ロール改造に起因するトラブル等は、使用者の責任であることに留意する。 |
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