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代かき同時打ち込み点播機の播種ロール改良による作業性向上効果

[要約]
代かき同時打ち込み点播機の播種ロールに、従来の播種穴3ヶ所に加え、新たに3ヶ所穴を開け改良することにより、田植機並みの作業速度0.8m/sでも6kg/10a程度の十分な播種量を確保できる。また、ha当たり作業時間は6割に短縮できる。
[キーワード]
  水稲湛水直播、打ち込み点播、播種ロール改良
[担当]岩手農研セ・農産部・生産工学研究室
[連絡先]電話0197-68-4415、電子メールCE0008@pref.iwate.jp
[区分]東北農業・作業技術、東北農業・水稲
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
寒冷地における水稲湛水直播栽培では、暖地に比べて苗立ち率が劣るため、播種量を多くして苗立ち数を確保する必要がある。しかしながら、市販の代かき同時打ち込み点播機に搭載されている播種ロールで、必要播種量5kg/10a以上確保するためには、作業速度を慣行田植機の半分程度まで遅くしなければならず、作業能率の低下をまねく。そこで、播種ロールの改良を行うことにより、作業性の向上を図る。
[成果の内容・特徴]
 
1. 市販の代かき同時打ち込み式点播機の播種ロール(以下通常3穴播種ロール)に、従来からある3ヶ所の播種穴に加え、新たに3ヶ所の穴を開けることで、播種量を十分に確保するとともに、作業性も向上できるように改良できる。具体的な播種ロール改良方法は以下の通り。(図1
1) 穴あけ位置は、通常3穴播種ロールの既存穴同士の中間位置(中心角で60°ずれた位置)とする。
2) 穴開口部は既存穴と同じく18mm×13mmサイズ。穴の深さは、基材の厚さが7mmであるため、最大でも6mm程度にする。また、コーティング種子の詰まりを防ぐために、穴底はU字型にドリル等で削る。
2. 通常3穴播種ロールの場合、通常の作業速度0.4m/sで播種量が最大5kg/10a程度にとどまるのに対し、改良6穴播種ロールを用いることで、6kg/10a以上の播種量設定が可能となり、株間等諸設定においても自由度が高まる。また、慣行の田植機並みの作業速度0.8m/sで播種する場合でも6kg/10a程度の播種量を確保できる。(表1図2
3. 播種量6kg/10a設定において、代かき同時打ち込み点播機のha当たり作業時間は、通常3穴播種ロールで2.7時間であるのに対し、改良6穴播種ロールを用いた場合1.6時間と、6割に短縮できる。(表1
[成果の活用面・留意点]
 
1. 作業速度が遅く、株間設定(ロール回転数)を10に近づけるほど、点播の株形成は不明瞭となり、条播に近い形状となる。
2. 表面滞水が多い条件で0.8m/s以上の高速作業を行うと、隣接条が泥流をかぶり、苗立ち不良となることがあるため注意が必要であり、泥流防止機構のない代かき機を用いる場合には速度を0.6m/s程度に抑える。
3. 新たな3穴には、過乾燥で砕けやすくなったコーティング種子の使用や、作業時の播種部への雨水浸入等、条件によっては、カルパー剥離粉末付着の恐れがある。
4. 播種ロール改造に起因するトラブル等は、使用者の責任であることに留意する。
[具体的データ]
 
[その他]
課題名: 北上川流域地帯における水稲湛水点播直播栽培技術の確立
予算区分: 国庫(地域基幹)
研究期間: 1999〜2002年度
研究担当者: 八重樫耕一、伊藤勝浩