研究所トップ研究成果情報平成14年度

水稲の最高分げつ期頃の冠水が生育・収量・品質に及ぼす影響

[要約]
平成14年7月10〜11日の台風6号の影響による水稲の冠水により、退水2〜3日後から葉枯現象が見られた。葉枯程度が大きいほど、出穂・登熟の遅延や穂数の減少が見られ、収量及び品質が低下した。冠水圃場のほとんどで黄化萎縮病による異常穂の発生が認められた。
[キーワード]
  水稲冠水被害、葉枯れ現象、収量・品質
[担当]岩手県農研セ・農産部・水田作研究室、生産環境部・土壌作物栄養研究室
[連絡先]電話0197-68-4412、電子メールCE0008@pref.iwate.jp
[区分]東北農業・水稲
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
平成14年7月10〜11日の台風6号の影響で岩手県内は大雨となり、県内各地で冠水被害が発生した。今回の冠水時期は、水稲の最高分げつ期頃であり、冠水直後、一関遊水地を中心に異常な葉枯現象が見られたことから、生育・収量・品質にあたえる影響について検討した。
[成果の内容・特徴]
 
1. 冠水は、7月13日には退水し、葉身のロール症状及び葉枯現象が7月15日頃から見え始めた。葉枯現象は、葉色が濃く(窒素濃度高い)生育量の大きい圃場や日陰等生育の遅れている圃場で顕著に見られた(図1表1)。
2. 葉枯した茎の一部は完全枯死したが、多くは被害茎基部からの分げつ芽の再生により、茎数の回復が見られた。しかし、再生した分げつ芽の有効化による遅延及び冠水による直接的な生育遅延の影響で、出穂は一般圃場より1〜2週間程遅れ、その傾向は葉枯程度が大きいほど顕著であった(表2)。
3. 冠水を受けた水稲のほとんどで黄化萎縮病による異常穂(奇形穂、出穂不能茎等)の発生が確認された(図2)。
葉枯による直接的な茎数の減少と黄化萎縮病による異常穂の発生により、正常な穂数は葉枯程度が大きいほど減少した(図2表2)。
4. 収量は、穂数の減少及び遅延穂の登熟不良により、葉枯程度が大きいほど低下した(図3)。葉枯程度10〜30%で収量は一度大きく低下するが、葉枯程度30〜60%の範囲での収量低下の程度は緩やかであり、70%以上の葉枯程度では減収程度が著しい傾向があった。
5. 葉枯程度が大きいほど、登熟が不十分な遅延穂が多く、青未熟・その他未熟粒などの混入が多くなり、品質が低下し、検査等級は2等、規格外に格付けされるものも見られた(表2)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 調査は、一関遊水地内を中心に、前沢町、北上市、花巻市において行った。品種は「ひとめぼれ」である。
2. 今回の水害は、濁水による冠水であり、被害が助長されたと考えられる。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 水稲作柄成立要因の解析
予算区分: 県単
研究期間: 2002〜2006年度
研究担当者: 吉田宏、高橋政夫、小野剛志