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安定同位体比質量分析を目的とした水稲デンプンの精製法

[要約]
13Cトレーサー実験において、デンプンの13C含量を分析するために前処理を行う。粉砕試料のエタノール可溶性画分をガラス繊維ろ紙でろ過後、不溶性画分から希硫酸抽出-アミラーゼ分解で得られたグルコース混合物を固相抽出法によりグルコースに精製する。
[キーワード]
  13C、デンプン、ガラス繊維ろ紙、固相抽出法、希硫酸−アミラーゼ分解
[担当]秋田農試・作物部・栽培生理担当
[連絡先]電話018-881-3336、電子メールc-miura@agri-ex.pref.akita.jp
[区分]東北農業・水稲
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
水稲の高品質安定生産のために登熟期間の炭素の転流と分配の解析が求められており、出穂期までに蓄積された非構造性炭水化物(以下NSC)の登熟における利用特性を明らかにする必要がある。これには13Cトレーサー実験が有効だが、一般的なNSC分析法はデンプン加水分解産物のグルコースを比色定量するため13Cデンプンは分析できない。そこで安定同位体比質量分析のために加水分解液から炭素夾雑物を除去し、グルコースを精製する前処理法を開発する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 操作は1)熱エタノールによる可溶性画分の抽出、2)ガラス繊維ろ紙を用いたろ過による可溶性画分と不溶性画分の分離、3)希硫酸による不溶性画分からのデンプン抽出、4)デンプンのグルコースへの加水分解、5)ろ過による残さと加水分解液の分離、6)固相抽出法によるグルコースの精製からなる(図1)。
2. エタノール不溶性画分はメタノール洗浄したガラス繊維ろ紙を用いてろ過し、ろ紙ごとデンプン抽出を行う。このときガラス繊維ろ紙からの炭素の混入及び、酵素分解による回収率への影響はない(表1)。
3. 分解液から主に酵素と酢酸緩衝液成分をSCXカラム(100mg)1個とC18カラム(360mg)3個に保持させて除去し、グルコースを精製する。分解液1mlをカラムに通した後、カラムを水2.0mlで洗浄し、通過液を回収して分析に供する(図1)。
4. 本法の信頼性検証のため不溶性画分に13Cグルコース試薬を加えて図1のとおり希硫酸抽出し酵素分解を行った後、グルコースを精製したときのトレーサー13Cの回収率は97%である(表2)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 本法は安定同位体比質量分析計により13Cデンプンを測定するためのものである。
2. デンプンの抽出および酵素分解の方法はDenisonらおよびTrentらの方法に準じている。
3. 成熟期の穂などデンプン含量の多い試料の場合には使用する量を調節する。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 気象変動に対応した良食味米の高品質生産技術の確立
予算区分: 県単
研究期間: 2000〜2002年度
研究担当者: 三浦恒子、田中福代(中央農研)、佐藤馨、金和裕、児玉徹