| [背景・ねらい] |
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岩手県は広大な県土を有し、地形、土壌、気候、水稲の栽培条件も多様であり、病害虫の発生も一様ではない。これまで、本県の主要病害であるいもち病の地域発生様相について解析を行ってきたが、その他の病害虫については地域性の評価を行っていない。そこで、岩手県の水稲主要病害虫すべてについて病害虫発生予察成績を解析することによって、本県の被害発生の地域性を明らかにするとともに被害発生リスクを評価する。 |
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| [成果の内容・特徴] |
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| 1. |
クラスター分析、主成分分析による水稲主要病害虫の被害発生の地域性
| (1) |
主要害虫、およびばか苗病の発生に地域性は認められない。 |
| (2) |
葉いもちは発生頻度、発生量により4地域、穂いもちは近年の発生傾向、発生量等により3地域、紋枯病、稲こうじ病、ごま葉枯病は発生量により2地域に区分される(表1)。 |
| (3) |
岩手県における水稲主要病害虫被害発生地域は、主要病害の被害発生特徴に基づき、「いもち病少〜中発生」、「いもち常時多発、ごま葉枯病多発」など7グループに分類される(表1、図1)。 |
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| 2. |
水稲主要病害虫の被害発生リスク※
| (1) |
主要害虫の県全体の被害発生リスク(被害発生圃場率5%以上の出現確率)はイネミズゾウムシで0.9、カメムシ類で0.8、イネクビボソハムシで0.3などである。 |
| (2) |
各グループにおける病害の被害発生リスクは穂いもち、紋枯病では0.5〜0.8で、グループ間に大きな差はないが、稲こうじ病で0.1〜0.6、ごま葉枯病で0.0〜0.8とグループ間に大きな差が認められる。 |
| ※ |
被害発生リスクの定義:被害発生圃場率5%以上の出現確率であり、被害発生の評価基準は表2の被害発生リスク評価基準である。 |
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| [成果の活用面・留意点] |
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| 1. |
このような手法により、水稲主要病害虫の被害発生の地域性とリスクを示すことで、地域での防除体系の見直しとなる。 |
| 2. |
被害発生リスクは要防除水準や経済的被害許容水準を示すものではない。 |
| 3. |
解析は1986年から2001年までの岩手県病害虫発生予察成績を用いたものであり、防除方法、品種等の変遷は考慮していない。統計解析の標本はほぼ農業改良普及センター管轄単位であり、また、標本内の調査地点数は5〜155点とばらつきが多く、地形、土壌、気候等の立地条件を考慮した詳細な地域性の解析には、更に調査地点数を多くするなど検討が必要である。 |
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