| [背景・ねらい] |
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尿道結石症は、去勢雄ウシに散発し、農家の経済的損失は大きいが、本症の処置は、外科的治療に頼らざるを得ない場合が多く、手術後は短期間で出荷する傾向にある。
そこで、簡便かつ術後の肥育期間延長を目的とし、陰嚢前方から閉塞部へ手術を進め、結石の手指、カテーテルおよびペアン鉗子による破砕除去を試みた。 |
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| [成果の内容・特徴] |
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| 1. |
手術方法
| ア. |
患畜は横臥保定とし、ロープで四肢を前後に進展させる。 |
| イ. |
麻酔は、塩酸キシラジンによる軽い鎮静および切開部の塩酸リドカインによる局所浸潤麻酔とする。 |
| ウ. |
皮膚は、陰嚢前方の正中を約15cm切開し、陰茎を上行性に触診し閉塞部位を確認する。 |
| エ. |
結石排除方法
| (ア) |
手指による方法
| a. |
結石が脆弱および小結石の集積時に適用。 |
| b. |
結石が脆弱な場合は破砕除去、小結石の集積の場合は陰茎S字曲を伸ばす様にし集積を解す。 |
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| (イ) |
カテーテルを用いる方法
| a. |
小結石が強固に集積している場合に適用。 |
| c. |
カテーテルは、人工授精用シース管などを用い、皮膚切開創より包皮切開、亀頭を露出させ、外尿道口から挿入する。 |
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| (ウ) |
ペアン鉗子を用いる方法(図1)
| a. |
比較的大型で硬い結石に適用。 |
| b. |
結石を確認した後尿道外部よりペアン鉗子で破砕する。 |
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| オ. |
閉塞していた結石が尿と供に排出したことを確認し皮膚縫合を行う。 |
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| 2. |
尿道結石による閉塞部位は、その殆どが陰茎S状曲の近位および遠位湾曲部である。(表1,2,3) |
| 3. |
切開創からS状曲までの深度は一手拳程度であり、手指の可動範囲も充分確保される。 |
| 4. |
手術時間は各結石除去法とも50分以内で終了する。 |
| 5. |
症例のと殺日齢は、平均673日齢であり、術後の肥育日数は、平均78日である。 |
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| [成果の活用面・留意点] |
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| 1. |
術後は必要に応じて抗生物質投与などの処置を行う。 |
| 2. |
患畜は、種々の試験設定のためと殺日齢が通常より短期間であったが、通常肥育ではと殺日齢を延長することが可能である。 |
| 3. |
尿道結石は日頃の飼養管理による予防が重要であり、手術は緊急避難的な行為である。 |
| 4. |
本成果は、閉塞した結石の除去のみに留まるため、膀胱中の結石は除去できない。 |
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