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ウシ胚由来未分化細胞の樹立と核移植胚の発生能

[要約]
ウシ胚由来の未分化細胞を無血清及び無フィーダーにより樹立した。また、この細胞を用い核移植したところ、胚の生産が可能で胚移植により受胎することが確認された。
[キーワード]
  ウシ、未分化細胞、核移植
[担当]山形農研セ・畜産研究部・先進技術開発科
[連絡先]電話0233-23-8811、電子メールaoyagik@pref.yamagata.jp
[区分]東北農業・畜産
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
遺伝的にほぼ同一の個体を生産できる核移植技術は、家畜改良への貢献が期待される。しかし、初期胚をドナーとした核移植では、ドナー細胞の数的制限のため複数以上のクローン個体を得るのが困難である。一方、体細胞クローンは提供した細胞の個体と同じ個体しか作出されず、育種的効果は少ない。そこで、本技術の確立により、ドナー細胞の段階で遺伝子診断が可能となり、選別したクローン産子が得られ育種改良に貢献できる。
[成果の内容・特徴]
 
1. 体外受精で得た拡張胚盤胞の内部細胞塊をI型コラーゲン薄膜層上で無フィーダーで無血清増殖培地を用いて培養すると、培養開始後3 4日目で細胞の伸展と活発な細胞増殖が観察され、培養11日目で細胞数は数千のレベルに達した。(図1)
2. 増殖した細胞は、内部細胞塊由来のものと栄養膜由来のものに区分され、アルカリフォスファターゼ染色では、内部細胞塊由来の細胞が強く染色され、栄養膜由来細胞は全く染色されなかった。(図2
3. テロメラーゼ活性を検討した結果、両細胞ともテロメラーゼ活性が認められた。(図3)
4. 内部細胞塊由来細胞をドナーとした核移植で、胚盤胞が発生(発生率22.2%)した。(表1
5. 移植成績は、新鮮胚で7頭、凍結融解胚で1頭の受胎が確認された。(表2
[成果の活用面・留意点]
 
1. 育種手法に取り入れることにより、効率的な選抜が可能となる。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: ウシ胚由来未分化細胞をドナーとした核移植
予算区分: 県単
研究期間: 2001〜2003年度
研究担当者: 青柳和重、千代豊、菅和寛、齋藤真希、齋藤朗子、小林正人、星宏良
発表論文等: 1)青柳・千代ら:第17回東日本受精卵移植技術研究大会
2)特許出願番号:2002-011306