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福島県における製パン適性の高い小麦新品種「ゆきちから」の採用

[要約]
「ゆきちから」は高蛋白で、製パン適性に優れる。耐寒雪性・耐倒伏性が強い良質品種で、適正な施肥管理により、安定した品質・収量が得られる。
[キーワード]
  小麦、ゆきちから、製パン適性、耐寒雪性、耐病性、奨励品種
[担当]福島農試・種芸部、会津地域研究支場、相馬支場
[連絡先]電話024-932-7785、電子メールtanji_katsuo_01@pref.fukushima.jp
[区分]東北農業・畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
「アオバコムギ」は、秋播きでは唯一の強力指定銘柄品種であるが、耐倒伏性が弱く栽培面積は年々減少してきた。しかしパン用として根強い需要があり、「アオバコムギ」並の製パン適性を有する品種が求められている。
一方、会津地域では水田転作として小麦の作付が急増しているが、耐雪性品種の「しゅんよう」は品質が不安定であるため、耐雪性のやや劣る「アオバコムギ」が作付されており、耐寒雪性の高い良質小麦品種が求められている。
これらのことから、「ゆきちから」を奨励品種に採用し、本県のパン用小麦の高品質化と積雪地の小麦の安定化を図る。
[成果の内容・特徴]
 
1. 「ゆきちから」は「アオバコムギ」と同熟期の中生の晩である(表1)。
2. 耐寒雪性は「強」で、根雪期間100日程度でも品質・収量は安定している(表1)。
3. 耐倒伏性は「アオバコムギ」に優る。うどんこ病及び赤さび病抵抗性はいずれも「アオバコムギ」に優る。穂発芽性は「アオバコムギ」並の「中」である(表1)。
4. 粒質は「硝子質」で、外観品質は「アオバコムギ」並に良好である(表1)。
5. 耐肥性が強く、適正な施肥管理により収量・子実蛋白ともに向上する(図1)。
6. 高蛋白で、パン加工適性は高く、パン用市販粉と同程度の加工適性を持つ(図2)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 「ゆきちから」を奨励品種に採用し、本県のパン用小麦の高品質化と積雪地の小麦の安定化を図る。
2. 福島県会津平坦部および中通り・浜通り地方を対象とし、普及面積は155haとする。
3. 基肥の窒素施肥量は10kg/10aを標準とし、子実蛋白含量と収量の向上のため、越冬後と出穂期の2回、それぞれ窒素成分で3kg/10aの追肥を行う。
4. 安定生産および品質確保のため、適期播種・適期収穫に努める。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 麦類奨励品種決定調査、小麦の高品質化のための品質制御技術
予算区分: 奨決、東北農研委託(21世紀プロ)
研究期間: 1998〜2002年
研究担当者: 丹治克男、二瓶直登、渡部隆、斎藤正明、半沢伸治、木田義信