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大豆リポキシゲナーゼの不活性化とその活用

[要約]
豆乳の青臭み生成の原因であるリポキシゲナーゼの不活性化法を検討した。浸漬大豆を30秒間,沸騰水でブランチング後に豆乳を調製した結果,脂質過酸化度を対照の1/3〜1/5に低減する事ができた。この技術を高イソフラボン大豆である東北126号に応用し、イソフラボンが多く青臭みの少ないデザートを試作した。
[キーワード]
  大豆、豆乳、大豆加工品、イソフラボン、リポキシゲナーゼ
[担当]福島ハイテク会津若松・発酵技術科
[連絡先]電話0242-39-2976、電子メールhendou@tsc.aizuwakamatsu.fukushima.jp
[区分]東北農業・流通加工
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
大豆は古くから日本人の重要な食糧資源として活用されてきた。近年、大豆タンパク質のコレステロール低下作用、大豆サポニンの抗癌作用,更に大豆イソフラボンが更年期障害低下作用、乳ガンや前立腺ガンの抑制作用等が明らかにされた。本研究は、大豆イソフラボンに着目し,県産大豆を利用してイソフラボンが多く,嗜好性に優れた加工食品の開発を目的としている。本報では青臭みの少ない豆乳を調製するため、製造現場で適用しやすい大豆リポキシゲナーゼの不活性化技術の開発を試み、その技術の東北126号(高イソフラボン大豆、2002年9月「ふくいぶき」と命名登録され,福島県奨励品種に採用)への応用について検討した。
[成果の内容・特徴]
 
1. スズユタカと東北135号(リポキシゲナーゼ全欠失大豆)を加熱絞り法で調製した豆乳の成分値(表1)は、タンパク質と固形分含量及びその抽出率では殆ど差がなかった。しかし、脂質過酸化度(DETBA法)はスズユタカが17.4n mol/ml、東北135号が4.7n mol/mlで大きな差があった。これより、リポキシゲナーゼの不活性化は脂質過酸化度を5n mol/ml前後にすることを基準にできると考えた。
2. 浸漬したスズユタカを60〜85℃で蒸気加熱した後、直ちに冷却し、加熱絞り法で調製した豆乳の脂質過酸化度及びタンパク質と固形分の抽出率を測定した。(図1)これより蒸気加熱処理によるリポキシゲナーゼ最適不活性化条件は75〜80℃、10分と考えられた。
3. 浸漬したスズユタカを60〜85℃の温水で2分間ブランチングし、直ちに冷却後、加熱絞り法で調製した豆乳の脂質過酸化度及びタンパク質と固形分の抽出率を測定した。(表2
これよりブランチング時間を2分とすれば不活性化の最適条件は70〜75℃と考えられた。
4. 製造現場で、より適用しやすい方法として沸騰水中(100℃)でのブランチング法について検討した。浸漬したスズユタカを沸騰水中でブランチングして直ちに冷却後、加熱絞り法で調製した豆乳の脂質過酸化度及びタンパク質と固形分の抽出率を測定した。(図2
沸騰水中で30秒ブランチング処理後に調製した豆乳はタンパク質や固形分の抽出効率を損なわず、ほぼ完全に不活性化されていることがわかった。
5. 東北126号を沸騰水で30秒間ブランチング処理後に調製した豆乳の脂質過酸化度は5.7n mol/mlで未処理豆乳(18.7n mol/ml)の1/3以下だった。この豆乳を使用して4種類のデザートを試作し、市販品と比較した。試作品の脂質過酸化度は市販品と同程度であったが、イソフラボンは市販品の2倍以上含まれていた。(表3
6. 試作したデザートの豆乳臭について官能評価した結果、ブランチング処理豆乳を使用したカスタードプリン,ババロア,杏仁豆腐は無処理豆乳を使用したものに比べ5%危険率で青臭みが有意に軽減されていることが明らかとなった。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 零細な豆腐製造業においても調製豆乳などの製造が可能となる。
2. イソフラボンがリッチなデザートや高齢者用食品の開発が容易に可能となる。
[具体的データ]
 
[その他]
予算区分: 県単
研究期間: 1999〜2002
研究担当者: 遠藤浩志(福島ハイテク若松)、大野正博(福島ハイテク)、丹治克男(福島農試)、島田信二(東北農研セ)、金子憲太郎(日本獣医畜産大)
発表論文: なし