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リンゴの「葉とらず栽培」における好適樹相


[要約]

  リンゴの「葉とらず栽培」における好適樹相は平均新梢長10〜20cm、葉色(SPAD値)48〜52、葉面積23〜30cm2、2次伸長枝率10%以下、葉中窒素濃度1.8%以下である。この樹相により、着色度140以上、均一度80%以上、熟度33以上、糖度15℃以上、果重350g以上の果実を生産できる。

[キーワード]

葉とらず栽培、リンゴ、樹相診断、着色系ふじ、わい化栽培

[担当]岩手農研セ・園芸畑作部・果樹研究室
[連絡先]電話 0197-68-4417、電子メール EC0008@pref.iwate.jp
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 リンゴでは、外観を重視する現行の品質評価に対し、ふじを中心に「葉とらず栽培」など、葉摘みを行わないといった着色管理の省力化が可能で食味の優れた果実の生産が試みられている。
 そこで、リンゴの「葉とらず栽培」に適した樹相について検討した。
[成果の内容・特徴]
1. 6月下旬に新梢長・葉色を、9月下旬に葉色・葉面積・2次伸長枝率・葉中窒素濃度を計測することにより、「葉とらず栽培」のための樹相診断が可能である。
2. 着色系ふじ(わい化栽培)を利用した「葉とらず栽培」で、目標とする果実品質(着色度140以上、均一度80%以上、熟度33以上、果重350g以上、糖度15%以上)を得るための好適樹相は以下のとおりである。
1) 平均新梢長(6月下旬) 10〜20cm、
2) 葉色(SPAD値)(6月下旬) 48〜50
葉色(SPAD値)(9月下旬) 50〜52
3) 葉面積(9月下旬) 23〜30cm2
4) 2次伸長枝率(9月下旬) 10%以下
5) 葉中窒素濃度(9月下旬) 1.8%以下
3. 各樹相要因と果重、着色、糖度等(一部データ省略)果実品質の間には高い相関関係がある(図1)。
4. 着果量は樹勢に応じて調整する必要はあるが、好適樹相の範囲であれば、4〜6頂芽に1果で果実品質に大きな影響を及ぼさない(図2、3)。
[成果の活用面・留意点]
1. 本成果の好適樹相は、わい化栽培の着色系ふじを対象とする。
2. 好適樹相による栽培では、慣行栽培に比べ収量が劣る傾向にある。
3. 好適樹相においても、2次伸長枝率は気象的な要因により高い数値となる場合がある。
4. 冷夏など生育期の気象条件が悪い年は、果実肥大が劣り、収量に影響を及ぼす場合がある。
5. 好適樹相を維持するためには、剪定を始め、施肥など総合的な管理を実施する。樹勢が強い場合は、スコアリングなど外科的手段も必要な場合がある。
6. 極端な樹勢の低下は、収量以外にも、糖度や酸度の低下を招くおそれがある。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:食味本位リンゴの均質化栽培技術の確立
予算区分:地域基幹農業技術体系実用化研究
研究期間:2000〜2004年度
研究担当者:小野浩司、鈴木哲、佐々木仁