インスリン感受性を指標とした乳牛の周産期病予測技術 |
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[要約] |
インスリン投与前後の血糖減少率が乾乳期で45%以下、泌乳初期で30%以下となると周産期病を発症する可能性が高い。また、周産期病を発症した個体は、乾乳直後の検査においてインスリン感受性が低下する。
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[キーワード] |
乳牛、周産期病、インスリン感受性、乾乳、BCS、簡易血糖測定器
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[背景・ねらい] |
近年、乳牛において平均産次数の低下や分娩間隔の延長が問題となっており、乳牛の早期淘汰・更新が農家の経営を圧迫していることから、供用年数を延長して生涯生産性を高めるために、平均産次数低下の大きな要因である分娩前後の周産期病を未然に防止する必要がある。そこで、分娩前後のインスリン感受性試験と周産期病発症との関連性を分析し、周産期病予測の可能性を明らかにする。
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[成果の内容・特徴] |
- インスリン感受性と疾病の発生状況
インスリン感受性(体重100s当たり5単位の即効性インスリン投与、投与前後の血糖減少率を調査)が乾乳期で45%以下、泌乳初期で30%以下となると周産期病を発症する可能性が高い(表1)。
- 乾乳直後のインスリン感受性と疾病の発生状況
乾乳直後の検査において、周産期病を発症した牛の60%はインスリン感受性が低下していたのに対して、未発症牛では0%であった(表2)。
- インスリン感受性とボディコンディションスコア(BCS)との関連
BCS3.25の牛に対し、BCSが高くなるとインスリン感受性が低下し、BCS4以上の過肥の牛では有意にインスリン感受性が低下する(表3)。
- 人体向け簡易血糖測定器の応用
血糖濃度について
通常使用する臨床化学自動分析装置と人体向け簡易血糖測定器4種のうち、1機種(グルコース酵素電極法)において有意な相関関係があり、インスリン感受性検査においても応用可能である(図1)。
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[成果の活用面・留意点] |
- 周産期病発症の可能性の高いインスリン感受性低下レベルを示し、高リスク牛の指標
となりうる。
- 泌乳後期からインスリン感受性を低下させないように過肥を防止してBCSを適正(3.25
±0.25)に保つ必要がある。また、乾乳方法や乾乳時の飼料給与などの飼養管理を適正にして、泌乳期から乾乳期への移行時の負担を軽減させるように留意する。
- 人体向け簡易血糖測定器は当試験以外にも、牛の臨床現場でも使用可能である。
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[具体的データ] |




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[その他] |
研究課題名 |
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インスリン感受性を指標とする周産期病の予測技術 |
予算区分 |
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地域基幹(資源循環型粗飼料生産体系による転作田産粗飼料を活用した乳牛飼養技術の確立)
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研究期間 |
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2002〜2004年度 |
研究担当者 |
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藤森康一郎、小笠原和弘 |
発表論文等 |
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藤森康一郎、小笠原和弘(2003) 産業動物獣医学会講演要旨:32 |
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