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ウシの歩行・走行速度の負荷強度と心拍数および血中乳酸値の関係

[要約]

ウシでは、心拍数が160回/分程度または歩行速度が75〜134m/分を超えると、急激に血中乳酸値が上昇、これらの値が有酸素・無酸素運動との分岐点である。また簡易血中乳酸測定器はウシの血中乳酸値測定に利用できる。

[キーワード]

ウシ、心拍数、血中乳酸値、走行速度、有酸素運動

[担当] 宮城畜試・酪農肉牛部・乳牛チーム
[連絡先] 電話0229-72-3101、電子メールishiguro-hi656@pref.miyagi.jp
[区分] 東北農業・畜産
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]
 乾乳牛のパドックを取り入れた飼養管理において、パドック運動が生理機能に及ぼす影響については不明な点が多い。そこで乾乳牛の歩行・走行速度と心拍数および血中乳酸値との関係について解明する。また、簡易血中乳酸測定器のウシでの利用について検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 血中乳酸値と心拍数の関係では、心拍数が160回/分程度を超えると、急激に血中乳酸値が上昇したことから、この値が有酸素・無酸素運動との分岐点であることが示唆される(図1)。
  2. 血中乳酸値と歩行・走行速度との関係では、乳酸濃度の高まりを開始する値「乳酸性閾値」は歩行速度75m/分前後、また乳酸が蓄積し始め無酸素運動が主体となる値「乳酸蓄積開始点」は、走行速度134m/分である(図2)。
  3. 簡易血中乳酸測定器による血中乳酸測定値は、酵素法による一般分析値と高い相関(r=0.98)がみられる。このことから、簡易血中乳酸測定器はウシでの利用が可能であり、かつ現場で即座に定量できる利点がある(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 心拍数または血中乳酸値を定量することにより、個体毎の適切な運動負荷が可能であり、また歩行による体力診断も可能である。
  2. ウシに対する有酸素運動負荷の有用性、運動生理についての研究を進める上で参考となる。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名 地域資源活用による乳牛の生涯生産性向上に向けた飼養管理技術の確立
予算区分 国助成(地域基幹)
研究期間 2001〜2004年度
研究担当者 石黒裕敏、木舩厚恭、植田郁恵
発表論文等 1) 石黒裕敏・木舩厚恭(2004)日本畜産学会第103回大会講演要旨:p92.