冬期播種栽培によりコムギ縞萎縮病の発生を抑止できる |
|
[要約] |
冬期播種栽培は、コムギ縞萎縮病の発生圃場において、本病の発生抑止効果が高く、秋播栽培よりも子実収量が有意に高まることから、被害軽減策として有効である。
|
[キーワード] |
コムギ縞萎縮病、冬期播種、発生抑止
|
|
|
[背景・ねらい] |
土壌伝染性ウイルス病害であるコムギ縞萎縮病は、岩手県では昭和22年にはじめて発生が確認されて以来、県北部の畑作地帯を中心に発生がみられていた。近年、麦の本作化に伴い、県南部においても水田転換畑の連作圃場を中心に被害が拡大し、生産性の低下が問題となっている。縞萎縮病は、播種後の気象条件、特に気温が感染・発病に影響(平均気温5〜20℃で感染可能)するため、通常の秋播栽培よりも播種期を2〜3週間遅くする晩播栽培が被害軽減に有効とされているが、本病による被害の回避には至っていない。
そこで、晩播栽培よりも播種期の遅い冬期播種栽培が、縞萎縮病の発生に及ぼす影響について明らかにし、本病被害軽減策としての実用性を検討する。
|
[成果の内容・特徴] |
- 秋播の場合、標播で播種後40日間、晩播でも播種後10日間は感染適温とされる平均気温10〜16℃の範囲で推移するのに対し、冬期播種は播種時期が根雪前であることから(表1)、感染温度の下限とされる5℃以下で推移する。また、播種〜翌春3月30日までの日平均気温10℃以上の積算値も秋播で高く、冬期播種で低い。(表2)
- 秋播で発病株率・発病度が高く、特に標播で被害が著しい圃場においても、冬期播種では全く発病がみられないか、ごくわずかに葉の黄化がみられるにすぎない。(表3)
- ELISAによるWYMV(コムギ縞萎縮ウイルス)の検出率は、標播では地上部、地下部とも100%で、晩播により若干の検出率の低下がみられる。冬期播種では全く検出されないか、検出された場合でもその値は低い。(表3)
- コムギ縞萎縮病発生圃場において、冬期播種では秋播と比較して穂長がやや短いものの、穂数または千粒重が大きく子実収量が有意に高い。晩播では、発病程度がやや低下しても穂数が標播より少なく、子実収量の向上はみられない。(表3、表4)
|
[成果の活用面・留意点] |
- 供試品種は「ナンブコムギ」(播性程度X、縞萎縮病抵抗性「弱」)であり、耕種概要については表1のとおりである。
- 冬期播種栽培の技術体系については、平成15年度成果情報「秋播性小麦の冬期播種栽培における収量・品質安定化技術」を参照する。
- 冬期播種を行った場合、播種後の平均気温が5℃以上で推移するような温暖な地域においては、発病状況が本成果とは異なる可能性がある。
|
[具体的データ] |




|
[その他] |
研究課題名 |
: |
冬期播種による小麦の高品質・持続的安定生産技術の確立 |
予算区分 |
: |
県単 |
研究期間 |
: |
2004〜2006年度 |
研究担当者 |
: |
荻内謙吾、勝部和則、及川一也 |
発表論文等 |
: |
荻内ら (2004) 日作紀 73 (別2):130−131. |
|