着色良好で甘酸適和な食味の中生のリンゴ新品種「緋のあづま」 |
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[要約] |
リンゴ「千秋」に「ひめかみ」を交配し、着色が良好で甘酸適和な食味を有する中生のリンゴ新品種「緋のあづま」を選抜、育成した。福島県での成熟期は9月下旬〜10月上旬で、「つがる」と「ふじ」の間に出荷できる。
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[キーワード] |
果樹、育種、リンゴ、中生種
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[背景・ねらい] |
平成15年度の本県のリンゴ栽培面積は1650haであり、そのうち68.5%を「ふじ」が占めている。一方、既存の中生種の栽培面積は、着色不良などの栽培性や食味・日持ち不良などの問題から減少が著しい。このため現地では「ひろさき早生ふじ」等「ふじ」の早熟系統が導入されつつあるが、「ふじ」の比率がさらに増加することにより授粉樹が減少し、結実不良の危険性が増加することが危惧される。このため「ふじ」と交雑和合性があり、着色を含めた果実品質が良好な中生種の育成が望まれている。
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[成果の内容・特徴] |
- 「緋のあづま」(図1)は「千秋」(♀)×「ひめかみ」(♂)の交雑実生から選抜され、2004年4月付けで種苗法に基づく品種登録を申請中である。
- 開花は「ふじ」より1〜2日程度遅れる。本品種は「ふじ」「つがる」「王林」「陽光」とは交雑和合性がある(表1)。
- 本品種は育成地で9月下旬〜10月上旬に収穫される中生種で、「千秋」より5〜7日遅く「ジョナゴールド」より5〜7日早い。
- 果皮色は濃赤色で、がくあ部まで着色する。縞は不明瞭で、ややスカーフスキンがある。果実重は、原木では7ヶ年平均で225.1gと小さいが、JM7台樹で335g(H15初結実)、実生台高接ぎ樹では378g(H15初結実)であり(図2)、中〜大玉生産が可能である。
- 食味は、糖度13.5〜15.0%、リンゴ酸0.40%前後で甘酸のバランスが良好で、果汁が多く濃厚であり、歯切れが良い(表2)。
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[成果の活用面・留意点] |
- 本品種は、9月下旬〜10月上旬に収穫できる着色・食味の良好な中生種であり、開花期は「ふじ」よりやや遅れるものの、「ふじ」と交雑和合性があることから、「ふじ」の授粉樹としても期待できる。
- 着色は8月下旬頃から始まり着色先行で推移する。そのため、未熟果でも鳥害が発生することがあるので、状況に応じて鳥害対策をとる。また、未熟果は酸が多く食味が劣るので、がくあ部まで着色が進み、酸が適正な値まで低下してから収穫する。
- 頂芽優勢性が強く、腋芽の発芽が強く抑えられる傾向があるので、せん定時には適度に先刈りを施し、腋芽の発芽を促進して葉面積の確保を図る。
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[具体的データ] |




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[その他] |
研究課題名 |
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リンゴ新品種育成試験 |
予算区分 |
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県単 |
研究期間 |
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1990〜 |
研究担当者 |
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岡田初彦、佐藤守、小野勇治、宗形隆、国沢高明、松野英行、瀧田誠一郎、佐久間宣昭、山家弘士 |
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