夏秋どりイチゴ産地における四季成り性品種導入の効果と条件 |
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[要約] |
夏秋どりイチゴ産地では,四季成り性イチゴを導入することで,空白であった8〜9月出荷を可能にし,長期出荷による高収益が期待できる。産地では,萎黄病の多発が課題であり,抵抗性品種の導入と,種苗費の低減,夏場の高収量・高単価などが条件となる。
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[キーワード] |
夏秋どりイチゴ,四季成り性イチゴ
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[背景・ねらい] |
秋田県における夏秋どりイチゴ産地は,露地による栽培とハウス利用の株冷作型によっているが,中心となる出荷期が6〜7月と10月に限定され,生産が停滞気味である。近年高品質の四季成り性品種が開発され,この品種による出荷期拡大,生産性向上効果と導入条件を明らかにする。
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[成果の内容・特徴] |
- 秋田県の夏秋どりイチゴ産地は,多雪地帯の遅い雪解けの立地条件を活かした遅出しの露地栽培が中心で,端境期に当たる6〜7月に,東京都卸売市場の40〜60%を占める。
- 産地の主要な作型は,9月定植,翌年6〜7月収穫(標高差により,約半月の格差)の露地栽培と,'70年代後半に導入された8月定植,9月下旬〜10月中心と,翌年5月下旬〜6月収穫のハウス・株冷栽培である。こうした既存の作型では,8〜9月が空白期になっている(図1)。
- イチゴ産地におけるアンケートでは,回答者94人中19人,20%が四季成り性イチゴを導入,もしくは導入希望であり,希望者はイチゴ農家の中では若干年齢が若く,イチゴ栽培面積,ハウス面積規模の大きい層である(表1)。
- 四季成り性品種の導入希望は,露地イチゴ産地のA組合よりも,産地歴が長く,経営内のイチゴ比重が高い露地+ハウス産地のB組合で多く,導入条件では,「高単価」,「夏場の高収量」,「栽培が容易」などが多い。また,四季成り性品種への期待では,「耐病性」,「日持ちが良い」,「形が良い」などが多い(表1)。
- 四季成り性イチゴの出荷期間は130日間で,露地普通栽培より92日,ハウス株冷栽培より29日長く,既存作型の空白期であった8〜9月出荷を可能にする。このため,10a当たり経営収支では,四季成り性イチゴの収量が2.7tで露地普通栽培の2.9倍,所得が284万円で3.9倍である。ただ,収穫作業の他に,花摘みや株管理時間が既存作型より多く,省力的な栽培技術が今後の課題である(表2)。
- B組合では,'02年11名,'03年3名が,四季成り性イチゴ(ペチカ)にとり組んでいるが,その後,萎黄病の多発,高額な苗代などがネックになり栽培を中止している。こうした課題を克服する四季成り性の新品種導入,栽培技術の確立が条件となる。
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[成果の活用面・留意点] |
- 労働集約度が非常に高いので,労力確保に見合う規模とする。
- 品種によっては,契約による出荷や採苗の禁止などの制約があるので留意する。
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[具体的データ] |



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[その他] |
研究課題名 |
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イチゴ四季成り性作型を導入する経営モデルの作成 |
課題ID |
: |
05-04-02-05-44-04 |
予算区分 |
: |
寒冷地イチゴ |
研究期間 |
: |
2003〜2007年度 |
研究担当者 |
: |
澁谷 功 |
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