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機能成分を多く含み搾汁率を高めたりんごジュースの製造法

[要約]

りんごジュース製造工程でセルラーゼを反応させることにより、未処理果汁の1.2倍以上の糖度(Brix示度)と2倍以上のポリフェノールを含み、廃棄物の発生は従来法の半分以下に軽減できる。

[キーワード]

リンゴ、セルラーゼ処理、廃棄物軽減

[担当] 岩手農研セ・生産環境部・保鮮流通技術研究室
[連絡先] 電話0197-68-4425、電子メールtse3622@pref.iwate.jp
[区分] 東北農業・流通加工
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 りんごジュース加工時には原料の約30%が搾りかすとして廃棄物になり、製造者は処分に困っている。この搾りかすには、ポリフェノールや食物繊維が多く含くまれ、食料資源として価値が高い。

 このため、搾りかすが少なくポリフェノール含量が豊富なジュースの製造法を開発し、同時に廃棄物の軽減化を図った。

[成果の内容・特徴]
  1. 搾りかすの少ないりんごジュースの製造法(図1
    1. りんごを除芯後破砕し、50%程度の果汁を搾汁する。
    2. 残りにセルラーゼを添加し搾汁する。
    3. これら2種類の果汁を混合し、酵素失活と殺菌を兼ねて加熱後充填する。
  2. 酵素反応条件
    1. 酵素は、セルラーゼY-NC及びセルラーゼ「オノヅカ」3S(共にY社製造)の2種類を併用する。
    2. 2種類の酵素添加量は、りんご破砕重量のそれぞれ0.5〜1%とする(図2)。
    3. 酵素反応時間は、3時間とする(図3)。
    4. 酵素反応温度は、55℃とする(図4)。
  3. 本法によるりんごジュースの特徴
    1. 未処理果汁の1.2倍以上の糖度(Brix示度)と2倍以上のポリフェノールを含む。
    2. Brix示度は16.0となる。
    3. ジュース食味試験では、‘ふじ’70%と‘ジョナゴールド’30%の混合果汁の評価が高い(図5)。
    4. 廃棄率は従来法の36.7%に対し、13.9%に軽減できる(表1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. ポリフェノールや糖含量は、酵素の添加量が多いほど、反応時間が長いほど及び反応温度が高いほど多くなるが、「苦み」や「甘み」が強くなるため目標Brix示度を16.0として酵素添加量及び反応条件を設定した。
  2. pH3.0から4.5の範囲内では酵素反応には大きな影響を及ぼさない(データ省略)。
  3. セルラーゼY-NCはセルラーゼとヘミセルラーゼやペクチナーゼなどを含有し、セルラーゼ「オノヅカ」3Sはセルラーゼを高濃度に含有している。この2酵素を併用することで残渣を最小にできる(データ省略)。
  4. 2種類の酵素の価格は各々1万円程度/kgである。
  5. 県内の実施例として、本法によるりんごジュースとコンニャク粉成分を混ぜて、機能成分を含む健康ジュースとして製品化している事例がある。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名 果実を丸ごと使った健康志向食品の開発
予算区分 県単
研究期間 2003〜2004年度
研究担当者 関村照吉、上山純子