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ユリ赤花色関連遺伝子の単離と発現

[要約]

LsCHSLsDFRLsF3H はカノコユリから単離されたアントシアニン合成系酵素遺伝子と相同な遺伝子である。LsDFR の発現は花弁アントシアニンの生成量との相関が見られるが、LsCHSLsF3Hの発現は相関が見られない。

[キーワード]

ユリ、アントシアニン合成系酵素遺伝子、CHS、DFR、F3H

[担当] 宮城農園研・バイオテクノロジー開発部・遺伝子工学チーム
[連絡先] 電話 022-383-8131、電子メール marc-kk@pref.miyagi.jp
[区分] 東北農業・生物工学
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]
 近年、培養を利用してユリの種間雑種の作出が可能となり、様々な花色の品種が育成されるようになった。花きの赤色花弁は主にアントシアニン色素によるものであるが、ユリに関する報告は少ない。そこで、赤花色色素に関与するアントシアニン合成系酵素遺伝子、カルコンシンターゼ(CHS)とジヒドロフラボノール4-レダクターゼ(DFR)、フラバノン 3-ヒドロキシラーゼ(F3H)を単離し、その発現を解析する。
[成果の内容・特徴]
  1. LsCHSLsF3HLsDFR は‘カノコユリ’からRT-PCRとRACE法によって単離されたアントシアニン合成系酵素遺伝子CHSF3HDFRホモログの全長である。ORFの長さはそれぞれ1185、1110、1134塩基であり、394、369、377アミノ酸をコードしている()。
  2. アミノ酸レベルでLsCHS はユリ‘アカプルコ’CHS1と99.0%、LsF3H はアンセリウムF3Hと79.5%、LsDFRはユリ‘アカプルコ’DFRと99.5%の相同性がある(表)。
  3. 薄層クロマトグラフィー(TLC)による花弁からのアントシアニンの検出と相関して発現が認められる遺伝子はLsDFRであり、LsCHSLsF3H の発現は花弁アントシアニンの生成量との相関が見られない(図1)。
  4. LsDFRの発現は花弁にアントシアニンを生成する‘赤カノコユリ’、‘アビニオン’の開花直前の蕾で見られるが、LsCHSLsF3H の発現は蕾ステージと無関係である(図2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. RT-PCRによる発現解析に用いたプライマーでゲノムDNAを鋳型としてPCRを行うと、供試した全ての品種で単一の増幅断片が得られる。
  2. LsCHS と相同性の高い ユリ‘モントレー’LhCHSA (AB058638)は花弁での発現が高いことが報告されている
[具体的データ]

[その他]
研究課題名 園芸作物育種におけるDNAマーカー利用技術の開発
予算区分 県単
研究期間 2001〜2003年度
研究担当者 足立陽子、千葉直樹、中村茂雄