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0.01M CaCl2上澄液法を基準とした水田土壌可給態ケイ酸の評価法

[要約]

風乾土1gに対し0.01M CaCl2 水溶液40mlを加え30℃,21日間培養の上澄液法は,稲体吸収量に近い量のケイ酸が溶出し,成熟期の茎葉ケイ酸含有率を評価する上で最も優れている。1時間振とうの溶出ケイ酸は上澄液法の約1/10となるが,上澄液法と直線関係にあり簡易法として使用できる。

[キーワード]

上澄液,21日間培養,水田土壌,可給態ケイ酸,茎葉ケイ酸含有率

[担当] 宮城古試・土壌肥料部
[連絡先] 電話0229-26-5107,電子メールtnori@faes.pref.miyagi.jp
[区分] 東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 高品質米生産や減農薬等の観点から水田土壌の可給態ケイ酸について適切な指標が求められている。これまでにもいくつかの測定法が提案されているが,操作が煩雑であることや,火山灰土壌の過大評価等の問題点がある。本研究では酢酸やリン酸等の酸を使用せず,土壌と塩化カルシウム(CaCl2)水溶液の比を1:40とした培養による方法を検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 50ml容プラスチックびんに風乾土1gを取り,0.01MCaCl2水溶液40mlを加え,30℃で静置培養する。培養は酸化的に行われ,経時的に上澄液に土壌ケイ酸が溶出する。90日間で100g乾土当り最大150mgのSiOが溶出する(図1)。
  2. 成熟期の稲体ケイ酸吸収量に近い溶出量が21日間の培養で得られるので,この培養条件を本法による可給態ケイ酸評価の基準とする(図2)。
  3. 黒ボク土を含む水稲の成熟期茎葉ケイ酸含有率の推定において,本法はこれまで提案された方法と比べて相関が高く,推定精度が良い(表1)。
  4. 風乾土4gに対し0.01M CaCl2水溶液20mlを加え,30℃・1時間振とうにより抽出されるケイ酸量は,上澄液法の21日間溶出ケイ酸量と高い相関があるので(沖積土:Y=7.3X+8.7 r=0.866,黒ボク土:Y=3.3X+21.2 r=0.728),沖積土と黒ボク土の違いを考慮すれば簡易法として使用できる。
  5. 茎葉ケイ酸含有率は15%を超えると頭打ち傾向であるため,累乗関数が当てはまる。ケイ酸含有率の目標値を11%とした場合,上澄液法による可給態ケイ酸の目標値は乾土100g当りSiO2として40mg,簡易法で直接評価する場合は沖積土で5mg,黒ボク土で6mg程度である(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 上澄液法でのケイ酸は,上澄液をろ過をせず直接採取し,モリブデンブルー法により測定する。振とう法も,振とう後約1時間静置して上澄液を供試できる。
  2. 稲体ケイ酸吸収量は,生育量,気象,灌漑水,根域の大きさなど,土壌以外の要因の影響も受けて変動する。これらの要因については今後の検討事項である。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名 土壌機能実態モニタリング調査
予算区分 国補(土壌機能増進事業)
研究期間 2000〜2004年度
研究担当者 斎藤公夫,瀧 典明,畑中 篤,島 秀之