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温度変換日数による水稲の窒素吸収パターンと籾数推定

[要約]

地温25℃温度変換日数を生育スケールとする稲体の窒素吸収パターンは、「幼穂形成期の窒素保有量Nx1」と「幼穂形成期から穂揃期までの窒素吸収量Nx2」により特徴づけることができ、これらを変数とする重回帰式でm2当たり籾数を精度よく推定できる。

[キーワード]

窒素吸収パターン、地温、25℃温度変換日数、籾数推定

[担当] 宮城古川農試・土壌肥料部
[連絡先] 電話0229-26-5107、電子メールDohiG@faes.pref.miyagi.jp
[区分] 東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]
 売れるコメづくりを目指す上で、気象変動に左右されず高品質で良食味のコメを安定して供給する必要がある。品種に最適な生育量と籾数を早い時期に予測・制御し、リスクが少なく確実な生産を図ることが望まれる。

 そこで、品種「ひとめぼれ」を対象とし、活性化エネルギーによる温度変換日数を生育スケールに用いた窒素吸収パターンと籾数の推定について検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. 登熟中期までの生育の進みを地温25℃温度変換日数で表示すると、稲体窒素吸収量の推移を指数的に増加するパターンと直線的に増加するパターンとに大別できる。この吸収パターンは、年次、栽培、立地条件が異なっても成り立っている(図1)。
  2. 窒素吸収パターンの変換点は暦日で幼穂形成期の7日〜14日前にあり、その特定が難しく、変換点と幼穂形成期の窒素吸収量に大差がないので、温度変換日数による窒素吸収パターンを「幼穂形成期の窒素保有量Nx1」と「幼穂形成期から穂揃期までに吸収した窒素量Nx2」により特徴づけることができる(図1)。
  3. Nx1、Nx2を変数とする下記の重回帰モデル式で「ひとめぼれ」の籾数が推定できる。幼穂形成期および穂揃期の窒素吸収量による籾数推定式(図2)と比較して、この重回帰モデル式の決定係数は高く、未知試料に対する推定誤差(RMSE)が1700粒/m2である(図3)。重回帰モデル式の標準偏回帰係数を求めると、Nx1がNx2より籾数に対し約2倍寄与率が高い。
      Y=2.73Nx1+1.17Nx2+10.6 (R2=0.929)
       Y: m2当たり籾数(×1000粒/m2
      Nx1:幼穂形成期の窒素保有量(g/m2
      Nx2:(穂揃期−幼穂形成期)窒素吸収量(g/m2
[成果の活用面・留意点]
  1. Nx1とNx2を組み合わせた籾数の推定表が作成でき、幼穂形成期にNx1がわかれば、「ひとめぼれ」の最適な籾数範囲(28000粒〜30000粒/m2)を得るためのNx2の目標値がわかる(表1)。
  2. Nx1は、草丈×m2当たり茎数×葉緑素計(SPAD502)値や携帯式作物情報測定装置(生研センター)等で非破壊的に求めることができる。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名 ブランド宮城米の“おいしさ指標”とその判定技術の開発
予算区分 県単
研究期間 1990〜1991年、1999〜2004年
研究担当者 佐々木次郎、関口 道、伊藤 修