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インパチエンスネクロティックスポットウイルス(INSV)によるリンドウえそ斑紋病(新病害)の発生

[要約]

鉢物リンドウにおいて葉に退緑斑紋やえそを伴う症状が発生した。原因究明の結果、インパチエンスネクロティックスポットウイルス(INSV)による新病害であったので、病名をリンドウえそ斑紋病と命名した。本ウイルスの感染をELISAにより検定する場合には、根部を試料とすることで安定して検出できる。

[キーワード]

リンドウ、えそ斑紋病、INSV

[担当] 岩手県農業研究センター・病害虫部・病理昆虫研究室、(財)岩手生物工学研究センター
[連絡先] 電話0197-68-4424、電子メールs-nekoduka@pref.iwate.jp
[区分] 東北農業・生産環境(病害)
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 2004年4月に岩手県北上市で栄養繁殖系の鉢植えリンドウの葉にえそを生ずる症状が多発した。病徴からトスポウイルスが病原として考えられたが、リンドウでは本ウイルスによる病害は未報告であったため、原因究明を行うとともに、診断ポイントをまとめる。
[成果の内容・特徴]
  1. 病徴は、はじめ葉に退緑斑紋を生じ、後にえそ斑を形成する。下位葉から発生し、展葉とともに上位葉へと進展する。株全体での発生はまれで、茎立ちした数本の茎葉に発生する(写真1)。発生を確認した品種は、栄養繁殖系の鉢物わい性リンドウの‘ももこりん’と‘あおこりん’である。
  2. 病患部から検出されたウイルスは、酵素結合抗体法(ELISA、表1)、トスポウイルスのユニバーサルプライマーを用いたRT-PCR法で増幅されたcDNAのシーケンス及び生物検定から、インパチエンスネクロティックスポットウイルス(INSV)と同定された。
  3. INSVによるリンドウの病害はこれまで報告がないので「リンドウえそ斑紋病」と新称する。
  4. 本ウイルスの感染が疑われる株の診断には、ELISAが有効である。この場合、茎葉からでは検出されないことがあるので、安定して検出できる根部を試料とする(表2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. リンドウにおけるトスポウイルスの自然感染は新知見である。
  2. 本ウイルスは、ミカンキイロアザミウマの媒介能力が高いとされるが、当該圃場でのミカンキイロアザミウマの発生の有無は調査していない。
  3. 当面の対策として、罹病株は廃棄するとともに親株の更新を行う。また、媒介するアザミウマ類の防除を徹底するとともに、圃場内外の雑草や不必要な花き類等は除去する。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名 新奇侵入病害虫の診断法と発生生態の解明
予算区分 国・県
研究期間 1996〜2005年度
研究担当者 猫塚修一、勝部和則