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転作復元年数及び圃場規模と穂いもち発生の危険性

[要約]

2003年の穂いもち多発要因の一つとして,転作復元圃場における穂いもち発生の危険性が明らかとなった。大豆作からの転作復元初年目では穂いもち多発の危険性が極めて高く,2年目以降になると,その危険性は減少する。

[キーワード]

穂いもち,転作復元年数,大区画汎用水田,圃場間差

[担当] 古川農試・作物保護部・土壌肥料部・水田利用部
東北農研・連携第1チーム・地域基盤研究部
[連絡先] 電話0229-26-5108 電子メールSakuhoG@faes.pref.miyagi.jp
[区分] 東北農業・生産環境(病害虫)
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 2003年は大冷害の影響で,作況指数は大きく減少した。障害不稔の多発によるところが大きいが,穂いもち多発の影響もその要因の一つである。穂いもちの発生程度には,圃場間差が認められ,一部の地域では発生程度の異なる圃場がモザイク状に出現し,これらの要因として,転作の影響や大区画汎用水田での輪作の影響が想定された。そこで,リモートセンシングによる穂いもち圃場被害度の評価とそれに先だって行われた栽培履歴などの事後調査を基にした大規模後向きコホート研究の手法で,転作復元年数と穂いもち被害度との関係を検討した。
[成果の内容・特徴]
  1. 転作復元初年目の圃場における穂いもち発生の危険性は,転作復元2年目以降の圃場に比較し極めて高い(図1)。
  2. 転作復元初年目の多発傾向は,水田の規模や地域に関わらず認められる(図1)。
  3. 同一農家が耕作する圃場間でも,この傾向は認められる(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. ここで用いた圃場ごとの穂いもち被害度は、2003年に実施したリモートセンシングにより評価した結果を用いた。
  2. 調査は宮城県F市T地区(未整備圃場:283筆約38ha)及びS町N・T地区(大区画圃場:148筆約94.6ha,未整備圃場:680筆約102ha)を対象とした。S町N・T地区の大区画圃場では,水稲3年大豆1年の輪作体系を実施しており,転作復元の前作は大豆が作付され,F市T地区及びS町N・T地区の未整備圃場でも,転作復元の前作は大豆作であるが、大豆が4年に1度のローテーションで栽培されているとは限らない。
  3. 転作復元初年目における多発傾向は,イネの作付け品種や葉いもち防除法などの交絡因子の影響を排除しても認められる。
  4. 転作復元初年目における多発傾向の一要因として,初年目における作土及び下層土からの窒素吸収量が多いことが挙げられる(図4)。
  5. 転作復元後の圃場では,施肥に細心の注意を払い,防除体制を強化するとともに,品種の選定にも留意する。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名 イネいもち病の地域リスク評価に基づく環境保全型防除導入の実証試験
水稲・大豆・麦を基幹とした大規模水田輪作技術の組立実証
予算区分 県単
研究期間 2004〜2008年度
研究担当者 笹原剛志,石川志保,畑谷みどり,佐々木次郎,高橋智恵子,小林隆,石黒潔