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アカヒゲホソミドリカスミカメは薬剤1回散布で防除できる

[要約]

ジノテフラン剤、クロチアニジン剤(粉剤DLおよび液剤、水溶剤)を用いると出穂期10日後頃の1回散布でアカヒゲホソミドリカスミカメの防除が可能である。

[キーワード]

イネ、アカヒゲホソミドリカスミカメ、防除、出穂期10日後頃1回散布、ジノテフラン剤、クロチアニジン剤、斑点米

[担当] 秋田農試・生産環境部・虫害担当、青森農林総研・病害虫防除室
[連絡先] 電話018-881-3326、電子メールt-niiyama@agri-ex.pref.akita.jp
電話0172-52-4314、電子メールmasaki_ishi@ags.pref.aomori.jp
[区分] 東北農業・生産環境(病害虫)
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 アカヒゲホソミドリカスミカメを主体とした斑点米カメムシ類の薬剤防除は2回散布が基本となっており、多発条件ではさらに追加防除が必要である。そのため、生産者からは散布作業の軽労化と低コスト化、消費者からは環境保全型農業の推進と食の安全・安心が求められ、これらのニーズに応えるためにはさらに薬剤の散布回数を削減した防除体系を確立する必要がある。最近開発されたネオニコチノイド系薬剤は、現在の主要薬剤である有機リン剤や合成ピレスロイド剤よりも本種に対して高い防除効果が得られている。そこで、ネオニコチノイド系薬剤のジノテフラン剤およびクロチアニジン剤を使用した本田1回散布による防除技術を確立する。
[成果の内容・特徴]
  1. ジノテフラン粉剤DLを出穂期12日後に1回散布すると、慣行薬剤のMEP粉剤DLとエトフェンプロックス粉剤DLの2回散布体系と比較して、アカヒゲホソミ ドリカスミカメ幼虫の発生密度を低く抑える(図1)。
  2. そのため、多発条件下でも慣行薬剤の2回散布体系より斑点米の抑制効果が高い。このことから、ジノテフラン粉剤DLの1回散布で防除が可能である(図1)。
  3. ジノテフラン剤(液剤)およびクロチアニジン水溶剤を様々な時期に1回散布すると出穂期10日後頃〜17日後の防除効果が高い(図2図3)。
  4. 以上より、ジノテフラン剤およびクロチアニジン剤の散布適期は出穂期10日後頃と考えられる。
  5. 30ha規模の現地実証圃場において、ジノテフラン粉剤DLの1回散布地区はMEP剤を2回散布した慣行防除地区よりやや勝る防除効果が得られる(表1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果が適用できる薬剤はジノテフラン剤とクロチアニジン剤で、散布量はジノテフラン粉剤DLが3kg/10a、クロチアニジン粉剤DLが4kg/10a、両剤の液剤 (水溶剤)は140〜150L/10aとする。
  2. 図3で用いたフサライド・ジノテフランフロアブルは未登録農薬であるため使用できない。液剤を使用する場合はジノテフラン液剤(10%)を使用する。
  3. 水田内でアカヒゲホソミドリカスミカメ幼虫の発生が認められない地域では、散布適期が異なる可能性があるため、別途、検討が必要である。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名 (秋田県)水稲栽培における環境保全型病害虫防除技術の開発、環境保全型水稲栽培技術の開発
(青森県)水稲・小麦品質阻害病害虫の多発要因と防除技術
予算区分 県単
研究期間 (秋田県)1999〜2003年度、2004〜2008年度
(青森県)2002〜2004年度
研究担当者 (秋田県)新山徳光、糸山 享
(青森県)石岡将樹
発表論文等 1)新山・糸山(2004)北日本病虫研報55:131-133