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耐冷性・耐病性に優れる良質・良食味水稲新品種候補「岩手68号」の採用

[要約]

「岩手68号」は岩手県では“中生の中”の粳系統である。耐冷性・穂いもち圃場抵抗性は「あきたこまち」より強く、多収である。品質・食味は「あきたこまち」と同等であり、耐冷性・耐病性に優れる良食味品種として奨励品種に採用する。

[キーワード]

イネ、岩手68号、耐冷性、穂いもち圃場抵抗性、品質、食味

[担当] 岩手農研セ・農産部・水田作研究室
[連絡先] 電話0197-68-4412、電子メールCE0008@pref.iwate.jp
[区分] 東北農業・水稲
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 岩手県における中生の主力品種である「あきたこまち」は耐冷性が弱く、冷害時には障害不稔が多発し、作柄を低下させる要因となっている。特別栽培米等の取り組みが拡大しているが、「ひとめぼれ」や「あきたこまち」はいもち病耐病性が劣り、病害が多発する危険性を有している。
 そこで、強い耐冷性と穂いもち圃場抵抗性を有した良質・良食味系統「岩手68号」を奨励品種に採用し、より一層の高品質生産と作柄の安定を図る。
[成果の内容・特徴]
  1. 「岩手68号」は1996年に旧岩手県農業試験場県南分場(江刺市)において、「岩南7号」を母、「ふ系179号」を父として人工交配を行った後代から育成された。
  2. 出穂期・成熟期は「あきたこまち」よりやや遅く、「ひとめぼれ」より早い“中生の中”に属する(表1)。
  3. 稈長は「あきたこまち」より短く、穂長は長い。穂数は「あきたこまち」より少ない(表1)。
  4. 耐倒伏性は「あきたこまち」より強い(表1)。
  5. 千粒重が「あきたこまち」より重く、収量性は「あきたこまち」より多収である(表1)。
  6. 玄米の外観品質は白未熟粒の発生が少なく、「あきたこまち」と同等に優れる(表1)。
  7. 食味は優れ「あきたこまち」並である。炊飯米の特徴は、「あきたこまち」ほど粘りは強くないが、飯粒の形がしっかりとしてつぶれにくく、適度な弾力があり、バランスのとれた食感を有する。(図1)。
  8. 葉いもち圃場抵抗性は“やや弱”であるが、いもち病真性抵抗性遺伝子型が“Pii,Pik”であることと、穂いもち圃場抵抗性が“強”であることから、いもち病多発圃場においても穂いもちの発生はきわめて少ない(表2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 耐冷性、穂いもち圃場抵抗性を活かし、中生品種の作柄の安定化及び特別栽培米の品質・収量の安定化を図る。
  2. 栽培適地は、盛岡以南の北上川流域標高100〜200m及び宮古以南の沿岸部標高100m以下の約23,000haであり、普及見込み面積は、特別栽培米生産を中心とした3,000haである(図2)。
  3. 多肥栽培では食味・品質が低下する恐れがあるので、当面基肥は「あきたこまち」並とし、追肥は幼穂形成期を重点とする。
  4. 葉いもち圃場抵抗性が“やや弱”のため、葉いもちの防除を実施する必要がある。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名 水稲奨励品種決定調査
予算区分 県単
研究期間 2002〜2006年度
研究担当者 臼井智彦、及川あや、高橋政夫