直播栽培に適する東北地域向け稲発酵粗飼料専用新品種「べこあおば」(奥羽飼387号)
[要約]
水稲「べこあおば」は東北中南部以南での熟期が中生の晩に属する粳種である。耐倒伏性が強く直播栽培にも適する。また乾物重が安定して高く、耐肥性に優れるため東北地域向け稲発酵粗飼料専用品種として利用できる。
[キーワード]
飼料イネ、稲発酵粗飼料、べこあおば、直播、東北地域、耐倒伏性、耐肥性
[担当]
東北農研・水田利用部・稲育種研究室
[連絡先]
電話0187-66-2773、電子メールmyama@affrc.go.jp
[区分]
東北農業・水稲、作物・稲
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
米の生産過剰傾向により水田では転作が求められている一方で、国内産の安全な自給飼料の生産拡大が重要な課題となっている。その中で、飼料イネは飼料自給率を向上できる転作作物として注目されている。現在育成されている飼料イネ品種は晩生のものが多いが、東北地域での飼料イネ生産を促進するために、できるだけ熟期が早く低コストで栽培可能な東北地域向けの飼料イネ品種を早期に育成する。
[成果の内容・特徴]
- 「べこあおば」は、大粒で多収の「オオチカラ」と多収の「西海203号」を1996年に交配し、その後選抜固定を図ってきた飼料イネ系統である。
- 出穂期は、育成地では“中生の晩”に属し「クサユタカ」よりも2日程度早く、黄熟期は「クサユタカ」よりも7日程度早い。稈長は「ふくひびき」と同程度かやや短い短稈で、耐倒伏性に優れている(表1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子は“Pita-2”と推定され、圃場抵抗性は葉いもちが“やや弱”、穂いもちが“弱”である。耐冷性は“弱”であり、穂発芽性は“やや易”である(表1)。
- 黄熟期におけるTDN収量は「クサユタカ」に劣るが、「ふくひびき」、「夢あおば」よりも1割程度多い(表1、表2)。玄米収量は「クサユタカ」並の多収であり、玄米は千粒重が約30gの極大粒で一般品種との識別性がある(表1)。
- 直播栽培で苗立は「ふくひびき」に劣るが、「クサユタカ」、「夢あおば」より優れ、耐倒伏性は「クサユタカ」、「ふくひびき」よりも明らかに優る(表2)。
- 地際から15cmの高さで刈取りした際の収穫損失率は移植、直播栽培とも稈長の長い「クサユタカ」、「夢あおば」と大きな差はない(表2)。
- 堆肥を多量施用した極多肥条件においても倒伏せずに耐肥性に優れる。黄熟期乾物重は窒素吸収量が高いほど多い(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 耐肥性が高いことから、堆肥施用などの多肥条件での栽培により適している。
- 安定した収量と栄養価を得るために黄熟期以降に収穫を行う必要がある。
- いもち病抵抗性遺伝子Pita‐2 をもつが、圃場抵抗性が弱いので発病を見たら防除等の対策が必要である。