寒冷地におけるイチゴ苗短日処理施設の昇温抑制法
[要約]
寒冷地でのイチゴ夏秋どりのための短日処理において、処理施設を夜間開放および明期半開することにより、施設内の昇温が抑制され、イチゴ苗の花芽分化が安定する。
[キーワード]
イチゴ、夏秋どり、短日処理、花芽分化、昇温抑制、夜間開放、明期半開
[担当]
東北農研・総合研究部・総合研究第3チーム
[連絡先]
電話019-641-9214、電子メールhyama@affrc.go.jp
[区分]
東北農業・野菜花き(野菜)、野菜茶業・野菜栽培生理、共通基盤・総合研究
[分類]
技術・参考
[背景・ねらい]
我が国のイチゴ生産では、夏秋期(7〜10月)が端境期となっており、高品質の国産イチゴの増産が強く求められている。寒冷地では、夜間冷房を行わずに遮光のみを行う短日処理により一季成り性イチゴ品種を花芽分化させ、夏秋期に収穫することが可能であるが、短日処理期間中の施設内高温が花芽分化を遅延させる場合があり、生産の不安定要因となっている。そこで、短日処理施設内の昇温を抑制し、イチゴ苗の花芽分化を安定させる簡易な手法を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 開発した手法は、短日処理施設を夜間に開く夜間開放および明期に遮光資材を施設肩部までの半開として遮光する明期半開処理(図1)である。
- 短日処理施設の夜間開放により、通常の短日処理の場合と比較して平均気温が約0.5℃、日最低気温が平均1.2℃低下し、開放後の気温が外気温とほぼ同程度となる(表1、図2)。
- 明期半開処理では、平均気温が0.4〜1.2℃、日最高気温が平均1.2〜2.2℃低下し、概ね9〜14時の間の施設内昇温が抑制される(表1、図2)。夜間開放と明期半開の組み合わせ処理の場合には、日最高・最低気温ともに単独処理と同程度に低下する。
- 低温年(2003年)のイチゴの処理有効株率には処理間で差がみられないが、高温年(2004年)には明期半開処理および夜間開放と明期半開の組み合わせ処理により有効株率が高まる(表2)。出蕾は各処理とも通常の短日処理の場合と比較して約1〜2日早まる。
- 低温年(2003年)には明期半開処理で日射量不足によりやや少収・少果となる(表2)。高温年(2004年)には株当たり収量、区別収量、果数ともに処理間で有意な差はない。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は「女峰」、「とちおとめ」、「さちのか」、「北の輝」を用い、5月下旬採苗、6月下旬〜7月下旬(2004年の「北の輝」のみ8月中旬)短日処理後定植、10〜11月収穫盛期の作型で得られたものである。
- 短日処理施設の夜間開放には、側窓用自動開閉装置をタイマー制御で利用する。
- 明期半開処理では、寡日照の場合に苗が徒長気味となり、減収要因となるため、曇天時には施設を全開するなどして日射量を確保し、苗の徒長を防ぐ。
[具体的データ]
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