乳清蛋白質濃縮物は哺乳子牛の脂質吸収を高める
[要約]
乳清蛋白質濃縮物の添加給与は、若齢哺乳子牛の消化管からのレチノールおよび中性脂肪の吸収を高める。
[キーワード]
乳清蛋白質濃縮物、ウシ、脂質、家畜栄養
[担当]
東北農研・畜産草地部・栄養飼料研究室
[連絡先]
電話019-643-3543、電子メールmendoza@affrc.go.jp
[区分]
東北農業・畜産、畜産草地
[分類]
科学・参考
[背景・ねらい]
乳清蛋白質濃縮物(WPC)は乳清を限外濾過によって濃縮し、乾燥させたものである。乳清はチーズ製造時の産業廃棄物であったが、熱変性を受けずに蛋白質が濃縮されることから近年は機能性蛋白質として多方面で利用されている。また、乳清蛋白質の主成分であるβ−ラクトグロブリン(BLG)は脂質親和性が高く初乳に多く含まれることから、新生子牛における脂質代謝に関与していることが示唆されている。そこで、若齢子牛の栄養素として重要な脂質の吸収に及ぼすWPCの効果と飼料原料としての有効性について検討した。
[成果の内容・特徴]
- 7日齢のホルスタイン種雄子牛に体重比0.04%のWPC添加乳にレチノールを混和して給与すると、血漿レチノール濃度が高まる(図1)。これはWPCがレチノールの吸収を高めたことを示している。
- 7日齢のホルスタイン種雄子牛に体重比0.04%のWPC添加乳に乳脂肪を混和して給与すると血漿中性脂肪が2及び7-10時間目が乳脂肪のみを混和し給与した場合に比べて高くなり、また、WPC添加乳に乳脂肪を混和して給与場合の哺乳後8時間目の血中超低密度リポ蛋白質濃度は乳脂肪のみを混和し給与した場合に比べて上昇する(図2)。これは消化管からの脂質吸収がWPCによって促進されたことを示している。
[成果の活用面・留意点]
- BLGが腸管内からの脂質成分の吸収を高めることをWPCで証明した初めての知見である。
- 若齢子牛の哺乳添加剤及びスターターの飼料開発への基礎的データとして有効である。
- 長期給与の効果については別に検討を要する。
[具体的データ]
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