牛筋肉の遊離L-カルニチン含量の変動要因
[要約]
牛筋肉中の遊離L-カルニチン含量は、肥育中の放牧飼養によって増加する。また、と殺後の牛肉中の含量は熟成期間中に変化することはなく、筋肉の酸化型筋線維数と正の相関がある。
[キーワード]
遊離L-カルニチン、放牧、筋肉部位、肉用牛、食品品質
[担当]
東北農研・畜産草地部・畜産物品質制御研究室
[連絡先]
電話019-643-6541、電子メールokabeys@affrc.go.jp
[区分]
東北農業・畜産、畜産草地
[分類]
科学・参考
[背景・ねらい]
反芻動物の筋肉内に多く存在し、長鎖脂肪酸を燃焼するのに必要な機能性物質であるL-カルニチンは、医療や食品の分野で注目されている。しかし、肉用牛の肥育過程において、筋肉中の遊離L-カルニチンの含量がどのように変動するかは知られていない。そこで、経時的に牛の筋肉をバイオプシーすることにより、牛の肥育過程における遊離L-カルニチン含量の変動と各種筋肉間における差異などについて明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 日本短角種牛を補助飼料なしで昼夜放牧(5-10月、13-18ヶ月齢)を行うと、舎飼いで肥育する時よりも、筋肉中の遊離L-カルニチン含量は高く推移する。しかし、冬期において共に舎飼いすることにより両区間の有意差はなくなる (図1)。
- 放牧期間中の牛における日中6時間の歩数(740.8±55.8, n=3)は、舎飼いの牛の歩数(333.2±23.3)よりも有意に高く、筋肉中の遊離L-カルニチン含量が高く移行する原因の一つとして、体内の脂肪酸をエネルギーに変換する運動量の差が考えられる。
- と殺後における牛肉の熟成期間中(10日間)に、遊離L-カルニチン含量が増減することはない (表2)。
- 22部位の筋肉におけるそれぞれの酸化型筋線維数割合(T型筋+UA型筋)は、遊離L-カルニチン含量と正の相関(r=0.46, 5%水準で有意)が見られることから、遊離L-カルニチンの筋肉中含量が高くなる要因の一つとして、酸化型の代謝を行う赤色筋の量が考えられる(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- 通常の熟成期間において、遊離L-カルニチン含量が減少しないことが示されたので、と殺までの飼養方法によって筋肉中の遊離L-カルニチン含量が制御できる可能性がある。
- この試験における飼養方法は、
舎飼:日本飼養標準2000年度版・粗飼料多給型肥育に準じ、配合飼料と乾草を給与
放牧:放牧地にて、補助飼料なしの昼夜放牧
である。
[具体的データ]
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