牛筋肉のアンセリン及びカルノシンの迅速測定法と筋肉中の含量
[要約]
Dunnett & Harris(1992)の方法から固相抽出のステップを省略しても、牛筋肉中のアンセリン及びカルノシンを定量することが可能である。また、アンセリンは筋線維型との間に相関は認められないが、カルノシン解糖型筋線維と有意な正の相関がある。
[キーワード]
アンセリン、カルノシン、迅速測定、筋線維型、肉用牛、食品品質
[担当]
東北農研・畜産草地部・畜産物品質制御研究室
[連絡先]
電話019-643-6541、電子メールakiraw@affrc.go.jp
[区分]
東北農業・畜産、畜産草地
[分類]
科学・参考
[背景・ねらい]
アンセリン及びカルノシンは食肉中に存在し、高い抗酸化性、緩衝作用及び有害アルデヒド消去能を有することで注目されている。本物質は一般的にはアミノ酸分析計によって測定出来るが、2から3時間の分析時間を必要とする。最も短時間で測定出来るものとして、Dunnett & Harris(1992)が逆相カラムを用いたHPLCで、12分で分析しているが、畜肉に適応できるか検討されていない。そこで、本手法の牛肉への適応を検討し分析方法を確立した上で、牛筋肉中含量の変動要因を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 図1の手順によりDunnett & Harris(1992)の手法を牛肉に適応することによって牛肉中のアンセリン及びカルノシンを約10分で定量することが出来る(図2-a)。
- Dunnett & Harris(1992)が述べている強陽イオン交換樹脂(ボンドエルート:Bond Elut PRS)による夾雑物の除去を実施しなくても、アンセリン、カルノシンのピークは分離可能でピークの純度についても問題はない。(図2-b,表1)。
- ホモカルノシンを内標準物質として利用し、回収率を計算出来る(図2-c,表1)。
- 使用するカラムとして資生堂Capcell Pak C18 ODS (150 mm×4.6 mm I.D., 5μm)を用いたが、島津及びスペルコ社製などの同等のカラムでも問題なく分析することができる。
- アンセリンと筋線維型との間には相関は認められない。しかし、カルノシンはUb型または(Ua+Ub)型筋線維数と有意(p<0.01)な相関(R=0.83及び0.87)があり、解糖型筋線維数の多い筋肉部位ほどカルノシン含量が高いといえる(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- ホモカルノシンは神経組織に存在すると言われているので、これらの組織の分析にはホモカルノシンを内標準として利用出来ない。
- Dunnett & Harris(1992)の報告は以下の論文を参照。 Mark Dunnet and Roger C.Harris. Determination of carosine and other biogenic imidazoles in equine plasma by isocratic reversed-phase ion-pair high-performance liquid chromatography. J. of Chromatography, 579 (1992)45-53.
[具体的データ]
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