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ブロア送風受粉法による大玉トマトの着果促進

[要約]

ブロアなどを用い大玉トマト花房に送風することで実用的な着果促進が可能である。夏秋トマト栽培における本方法での労働時間は、慣行方法のホルモン処理とほぼ同等である。

[キーワード]

大玉トマト、着果促進、振動受粉、送風、労働時間

[担当] 福島県農業総合センター・浜地域研究所
[連絡先] 電話 0244-35-2633,電子メール nougyou.hama@pref.fukushima.jp
[区分] 東北農業・野菜花き(野菜)
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 通常、大玉トマト栽培においては、ホルモン処理による着果促進が慣行的に行われている。一方で、有機JAS法においてはホルモン処理剤の使用は認められておらず、それら圃場においては受粉昆虫利用やバイブレーターによる振動受粉による着果促進が行われている。また、それらについては、空洞果の発生抑制にも効果があることが知られている。
 しかし、受粉媒介昆虫の使用に当たっては、その効率的利用及びハウス系外生態系保全の観点から、逃亡防止のため防虫網の展張、さらにセイヨウオオマルハナバチなど特定外来生物の使用の際には許可申請と厳密な管理が必要である。また、振動受粉に当たっては、労働コストの増加が懸念される。
 トマトは、物理的振動により受粉が補助されることから、送風処理による省力的かつ効果的な着果促進技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. ブロア送風による受粉は、電動ハンディブロアなどを用い、花房が1〜2秒程度揺れるように送風することにより行う。
  2. 送風受粉により、無処理に比べ着果数の増加、着果率の向上がみられ、バイブレーターを用いた振動受粉法との差はみられない(図1)。また、本法においても空洞果及び他の障害果の発生は少ない。(表1
  3. ホルモン処理法と比べ、本法の一回あたりの作業時間は40%程度と極めて短い(表2)。
  4. 受粉適期(開花当日〜3日間といわれる)、及び花粉発芽限界温度(上限35度C)を考慮すると、本法での受粉作業は、春季は週2回、夏季は週3回程度実施する必要があるが、その場合の労働時間は、ホルモン処理法と同程度である。(表3
[成果の活用面・留意点]
  1. 無電源ハウスでは背負式動散などにより同様の処理が可能であると考えられる。
  2. 受粉処理は、トマトの受粉適温時(気温20〜30度C)に行う。
  3. 開花花房に風を当てるだけなので作業難易度が比較的低く、精神的疲労が少ない。また、同時に、作業委託に適すると考えられる。
  4. ホルモン処理における空洞果多発時や受粉昆虫の能力低下時など、他の受粉法と組み合わせ、併用することにより収量、品質の安定化が期待できる。
  5. 花房全体を揺らすため、株の栄養状態が悪く、花落ちが激しいときは本法を用いない。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名 野菜有機農産物生産技術の確立
予算区分 国庫補助(電源立地交付金)
研究期間 2005〜2006年度
研究担当者 中山秀貴